タイ古式マッサージ

登山の翌日に筋肉痛が出るのはなぜ?登りより下りがこたえる理由と、下山後の体の戻し方

紅葉の時期になると、山から戻ったばかりという方がいらっしゃいます。多くの場合、下りたその足でではなく、翌日か2日後にいらっしゃいます。「下りてきた日は平気だったのに、翌朝から階段が下りられなくて」と苦笑いされます。

 

もうひとつよく聞くのが、「登りは元気だったのに、痛いのは下ってからの部分だけ」という話です。心臓が苦しかったのは登りなのに、翌日つらいのは太ももの前側。この食い違いには、はっきりした理由があります。

 

先に、体の中で何が起きたのかをはっきりさせます。起きたことが分かれば、やるべきことは自然に絞られますし、やっても意味のないことに時間を使わずに済みます。

登りと下りで、筋肉の仕事が入れ替わる

坂を登るとき、太ももやお尻の筋肉は縮みながら力を出しています。自分の体とザックの重さを、一段ずつ上へ持ち上げる仕事です。息が上がり、汗が出て、心臓が忙しくなる。つらさを感じるのはこちらなので、登りのほうが体に負担をかけていると思われがちです。

 

ところが下りでは、同じ筋肉が正反対の働き方をします。一歩ごとに落ちてくる体を、筋肉が引き伸ばしながら受け止める。ブレーキをかけ続ける仕事です。

 

この「伸ばされながら力を出す」働き方は、筋肉の繊維や、それを包む組織に細かい損傷を起こしやすいことが知られています。下り坂を歩いたあとに強い筋肉痛が出るのは、そのためです。呼吸は楽になり、登りほど汗もかきません。つらさの自覚がないまま、筋肉の側には傷が積み上がっていきます。

 

しかも下りは、登りより速く進めてしまいます。同じ標高差を、登りの半分から3分の2ほどの時間で下りる方が多いはずです。速く下りても、ブレーキをかける回数そのものは減りません。同じ回数を、短い時間に詰め込むことになります。

 

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ザックの重さは、下りで効いてくる

荷物の重さも、登りと下りで意味が変わります。

 

登りでは、重さは「持ち上げる対象」です。きついけれど、つらさとして正直に自覚できます。下りでは、重さは「止める対象」に変わります。体重に荷物の重さが上乗せされた状態で、その全部を一歩ごとに受け止めることになる。日帰りの軽装と、テント泊装備を背負った下山とで、翌日の脚の重さがまるで違うのは、ここが理由です。

 

段差の大きい道ほど、この負担は増えます。階段状に整備された下りが、意外なほどこたえるのはそのためです。膝を深く曲げて体を落とし、その勢いを止める。これを何百回と繰り返すことになります。

 

「整備された道のほうが楽だと思ったのに、翌日いちばん痛かった」という声は、この構造から出てきます。木の階段や石段は、段の高さが一定で、しかも高めにつくられていることが多い。自然の斜面なら足を置く位置を選べますが、階段ではそれができません。同じ動きを同じ高さで繰り返すことになるので、一か所に負担が集中します。

どこが痛くなるかは、だいたい決まっている

下山後の筋肉痛には、出やすい場所の傾向があります。当店にいらっしゃる方の訴えも、だいたい次の4か所に集まります。

 

 

痛む場所 主に働いた場面 出方の特徴
太ももの前側 下りで体を受け止めるブレーキ役 いちばん訴えが多い。階段を下りる動作でつらい
ふくらはぎ 登りの蹴り出しと、下りでの細かい姿勢の調整 つった経験がある方は、翌日も張りやすい
お尻の奥 段差を乗り越える動作と、下りでの体幹の安定 痛みというより重さとして感じることが多い
腰から背中 ザックを背負った姿勢の保持 荷物が重いほど、下山の後半から出てくる

 

 

太ももの前側に集中するのは、先ほどのブレーキ役をこの筋肉が担っているからです。階段を下りるときだけ痛い、椅子から立ち上がるときに「うっ」となる、という訴えは、ほぼこの場所のものです。

 

いっぽうで、お尻の奥と腰は、ご自分では場所を特定しにくい部分です。「どこが痛いというより、下半身全体が重い」とおっしゃる方に触れていきます。すると、ご本人が「ここでした」と気づかれることがよくあります。

 

左右で出方が違うこともよくあります。ザックの重心が片側に寄っていた、カメラを一方の肩から提げていた、痛めた経験のある側をかばって歩いていた。理由はさまざまですが、片側だけ強く張っている方は多いです。ご自分では気づきにくい部分ですので、施術のときにお申し出いただければ、左右の差に合わせて組み立てます。

 

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筋肉痛ではなく、全身がだるいという日

「痛いというほどではないけれど、翌日一日なにもできなかった」という声もよく聞きます。これは筋肉痛とは別のものです。

 

日帰り登山でも、行動時間は5時間から8時間になります。その間ずっと、足場の悪い場所で体を支え続け、たいてい朝は早く起きています。睡眠は短く、食事も行動食で済ませがちです。山から下りてくる頃には、筋肉の損傷とは別に、体を動かすためのエネルギーが底をついた状態になっています。

 

標高が上がれば空気は薄くなり、体は普段より多く呼吸をして酸素を取り込もうとします。そのぶんだけ、気づかないうちに体力を使っています。車の運転で帰る方なら、下山後にさらに数時間の緊張が加わります。

 

筋肉痛は翌日から出はじめ、2日目あたりがピークです。この全身のだるさは当日から翌日にかけてがいちばん強く、寝て食べれば戻っていきます。両方が重なる翌日が、いちばんつらい一日になります。

「登山の翌日は休みを取る」という備え

身も蓋もない話ですが、下山の翌日には予定を入れないでおくのがおすすめです。日曜に登って月曜から仕事、という組み方をすると、痛みのピークと仕事が重なります。

 

連休のある月なら、初日に登って残りで戻す。それが難しければ、翌日の予定を軽いものにしておく。下山の翌日に無理のない予定を組むことが、手軽な備えになります。

痛みが出るのが翌日なのは、なぜか

その場では平気だったのに、翌日になって痛みが来る。この時間差を不思議に思われる方は多いです。

 

下りで起きているのは、筋肉の繊維とそれを包む組織の、ごく細かい損傷です。傷そのものは下山中から始まっていますが、痛みとして感じるまでには時間がかかります。損傷したところを片づけて作り直す働きが、体の中で始まる。その過程で周囲の組織が腫れたり、痛みを感じる神経が敏感になったりする。この二次的な反応が出そろうのが、半日から1日ほどあとなのです。

 

痛みは下山の翌日から出はじめ、2日目あたりがピークです。3日目ごろから引きはじめ、張りと動かしにくさが数日残る。これが一般的な流れです。

 

ここで覚えておいていただきたいのは、痛みの強さと、傷の大きさが必ずしも一致しないことです。痛みは、傷の量そのものではなく、神経がどれだけ敏感になっているかを反映しています。「あまり痛くないから大丈夫」と翌週も同じペースで登ると、戻りきっていない状態で下りに入ることになります。

同じ山に何度か登ると、軽くなっていく

久しぶりの登山でひどい筋肉痛になった方が、2週間後に同じ山へ行くと、明らかに軽く済むことがあります。一度その負荷を経験した筋肉は、次に同じ刺激を受けたときに損傷しにくくなるためです。

 

この効果は、1回の登山でもしばらく続くとされています。シーズン初めの一本がいちばんつらく、そこから楽になっていく感覚には、裏づけがあるわけです。逆に、半年ぶりの登山では最初の一本の負担が大きくなります。久しぶりの方ほど、下りのペースを落として、歩幅を小さくしてください。

「下山後のストレッチは意味がない」という話をどう受け取るか

登山の記事を読んでいると、この見出しに行き当たることがあります。下山口でストレッチをしている人を見かける機会は多いので、面食らう方もいるはずです。少し丁寧に整理します。

研究が言っているのは「痛みを軽くする手段としては期待できない」まで

運動後の静的なストレッチ、つまり体を伸ばした姿勢で止めるタイプのストレッチがあります。これについては、複数の研究をまとめた分析で「筋肉痛を軽くする効果は確認されなかった」という結論が出ています。この点は、ランニングについて書いた記事でも同じ結論でした。

 

ここで大事なのは、言われているのが「筋肉痛の予防と軽減の手段としては期待できない」までだということです。ストレッチそのものが体に悪い、という話ではありません。

ただし、傷んだ直後の筋肉を強く伸ばすのは別の話

下山直後の筋肉は、細かい損傷が起きている状態です。そこへ「痛気持ちいい」を超える強さで伸ばしにいくと、損傷を広げる方向に働きうると考えられています。軽く張る程度なら問題ないとする研究もありますが、強さの線引きを数字で示せるほどの根拠はまだありません。

 

当店では、こうお伝えしています。

 

 

  • 下山直後にその場でやるなら、軽く伸ばす程度まで。痛みを感じるところまで引っ張らない
  • 筋肉痛を消す目的でストレッチに時間を使わない。その役割は期待できません
  • 体を動かしやすくしたい、という目的なら意味がある。翌日以降は、動かせる範囲で軽く動かすほうが戻りは早いとされています
  • 痛みが強い日に無理に伸ばさない。動かせる範囲は日ごとに戻ってきます

 

 

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下山後の過ごし方を、時間の順に並べる

やることを並べるより、いつ何をするかで考えたほうが迷いません。

 

 

時期 体の状態 していいこと 控えたほうがいいこと
当日(下山〜就寝) エネルギーと水分が不足。脚はむくみやすい 食事と水分、ぬるめの入浴、早く寝る 長湯、飲みすぎ、痛む場所を強く揉む
翌日〜2日目 筋肉痛のピーク。動かすと痛い 平坦な道を軽く歩く、痛まない場所を温める 強く伸ばす、痛む場所への強い圧、次の山
3日目〜1週間 痛みは引いていき、張りと動かしにくさが残る 動かせる範囲を戻す、施術で股関節まわりを緩める 痛みが残るうちの長い下り

 

 

ここからは、この3つの時期を順に見ていきます。

当日(下山してから寝るまで)

まず、水分と食事です。行動中に足りていないことがほとんどなので、帰宅前に何か口に入れてください。行動食だけで下りてきた日は、たんぱく質がとくに足りていません。下山後の食事で、肉や魚、卵、豆腐といったものを一品足してみてください。傷んだところを作り直す材料になります。

 

運転がある方は、途中で一度降りて歩くだけでも脚のむくみ方が変わります。高速道路のサービスエリアで5分歩く。それだけで、家に着いてからの脚の重さが違います。

 

入浴は、その日の脚の状態で決めます。熱を持ってズキズキするなら長湯は避けて、ぬるめで短く。張っているだけなら、湯船で温めて血の巡りを戻すほうが、翌朝が楽だという方が多いです。温泉に寄って帰る方も多いと思いますが、長く浸かるほどよいというものではありません。のぼせるほど入ると、帰りの運転がつらくなります。

 

脚を上げて休むのも、当日のうちにしておきたいことです。ソファに座って足首の下にクッションを入れる程度で構いません。下山直後は、重力に逆らって血を戻す働きが追いついていないので、むくんだまま朝を迎えると重さが残ります。

 

なお、当日のうちに痛む場所を揉みたくなる方がいますが、これは翌日以降と同じで控えてください。張っていない場所を軽くさするくらいにしておきます。

 

そして睡眠です。回復にとってここがいちばん大きい要素で、削ると翌日の重さがはっきり変わります。体を作り直す働きは眠っているあいだに進みますし、早朝から行動していれば睡眠は前の晩から足りていません。写真の整理も、記録の投稿も、翌朝で間に合います。

翌日から2日目(痛みのピーク)

痛みは下山の翌日から出はじめ、2日目あたりが山になります。この時期は、完全に休むより、軽く動かすほうが戻りは早いとされています。平坦な道を散歩する、階段を使わずゆっくり歩く、といった程度で構いません。

 

強く揉むのは、この段階では控えてください。痛みが強い場所に圧をかけると、かえってつらく感じます。当店でも、下山翌日にいらっしゃった方には、痛む場所を避けて、腰から背中、股関節まわりを中心にお受けすることが多いです。

 

冷やすか温めるかで迷われることも多いのですが、目安は熱を持っているかどうかです。両脚とも同じように張っていて、触ると熱っぽいなら、その場所は冷やして様子を見ます。片側だけが腫れている、ひねった・打った心当たりがある場合は、冷やす前に、後で挙げる受診の目安を確かめてください。熱はないけれど張って重いなら、温めて巡りを戻すほうが楽になる方が多いです。ただし、どちらが早く引くかを比べた研究で、はっきり決着がついているわけではありません。その日の感じ方で選んでいただいて構わない、というのが当店の考えです。

3日目以降(動けるようになってから)

痛みが引いてきたら、張りと動かしにくさが残っている場所に手を入れていく時期です。ご自分では届きにくいお尻の奥や、股関節の前側がここに当たります。

 

3日目以降にもうひとつしておきたいのが、次の予定の確認です。今シーズンあと何回山に入るのか、いちばん長い下りはどこか。施術をご利用になる場合は、次の山の2日前までにと決めておくと、予定が立てやすくなります。

 

この時期に見落とされやすいのが、脚以外の場所です。ザックを背負っていた肩と背中、ストックを握っていた前腕、カメラを提げていた側の首すじ。脚の痛みが目立つあいだは意識に上がりませんが、痛みが引くと「そういえばここも」と気づかれます。施術で伺うときは、脚以外で気になる場所も教えてください。

筋肉痛と、膝の痛みは分けて考える

下山後の訴えでもうひとつ多いのが、膝です。これは筋肉痛とは切り分けて考えてください。

 

筋肉痛は、筋肉のおなかの部分が広い範囲で痛みます。押すとどこも同じように痛く、動かしはじめは痛いけれど、動いているうちに少し楽になることが多い。数日で引いていきます。

 

いっぽう、膝の痛みは場所が狭く限られます。お皿の周り、膝の外側、内側の一点など、「ここ」と指させることが多いのが特徴です。体重をかけたとき、とくに段差を下りるときに鋭く来ます。日が経っても引かない、階段だけがつらい状態が続く、というときは、筋肉痛ではない可能性があります。

 

当店では、膝そのものに強い圧をかけることはしません。触れるのは、膝に関わる太ももとふくらはぎ、股関節まわりです。膝の中で起きていることは外から確かめられませんので、痛みが一点に残っている場合は整形外科でご相談ください。

 

「登山のたびに同じ側の膝が痛くなる」という方も、一度みてもらってください。毎回同じ場所に出るということは、偶然ではなく歩き方か体の使い方に理由があるということです。そこはサロンで解決できる範囲を超えています。

次の山のために、下りでできること

筋肉痛を完全に避ける方法はありませんが、下りでの負担は歩き方で変わります。

 

 

  • 歩幅を小さくする。一歩が大きいほど、落ちる距離が伸びて止める力が要ります
  • 段差では、高いほうの足でゆっくり送る。飛び降りるように体重を預けると、受け止める側の負担が一気に増えます
  • ペースを上げすぎない。下りは楽に進めてしまうので、気づかないうちにペースが上がります
  • ストックを使う場合は、体重の一部を腕に逃がす意識で。膝への負担が軽くなることが報告されています
  • 休憩を早めに入れる。脚が疲れてからでは、着地の制御が雑になります

 

 

どれも特別なことではありませんが、下山の後半でいちばん崩れやすい部分です。疲れてくると歩幅が大きくなり、ペースが上がります。翌日の痛みの多くは、下山の最後のほうでつくられています。

 

登る前の準備という意味では、シーズンの入り方も効きます。半年ぶりにいきなり標高差1,000メートルの山へ行くより、その前に近場の低い山を一度挟んでおくほうが、体は楽です。先ほどの「一度経験した負荷には強くなる」という仕組みを、本番の前に使っておくわけです。登る距離を伸ばす必要はありません。下る量を一度体に通しておくことが大事です。

施術より先に、医療機関に相談したほうがいいとき

登山の後は、筋肉痛と紛らわしい状態が起こりやすい時期でもあります。次に当てはまる場合は、施術ではなく医療機関にご相談ください。

 

 

  • 足首や膝をひねった、転んで打った。腫れや熱、内出血がある
  • 片側だけが腫れている、押すと強く痛む場所が一点にある
  • 体重をかけると鋭い痛みが走り、歩き方が変わってしまう
  • 筋肉痛が1週間を過ぎても引かない、またはピークを過ぎた3日目以降に、かえって強くなる
  • 尿の色が普段よりはっきり濃い、筋肉の痛みに加えて力が入らない
  • 発熱やふらつきを伴う

 

 

とくに気をつけたいのが、下りでの転倒です。登山中に足を滑らせて尻もちをついた、木の根につまずいて手をついた。その場では歩けてしまうので、翌日の痛みを筋肉痛と一緒くたにしてしまいがちです。ぶつけた場所に内出血や腫れが出ていないか、下山の翌日に一度確かめてください。

 

ひねった直後の関節や、打った場所に圧をかけるのは避けるべき状態です。また、長時間の運動のあとに強い筋肉の痛みと濃い尿が重なる場合は、様子を見ずに受診してください。まれに、筋肉が壊れたときに出る成分が尿に混じることがあるためで、これは病院でなければ確かめられません。これらは、マッサージで判断できる範囲を超えています。

 

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下山後にいらっしゃった方に、当店が伺うこと・していること

登山の後にいらっしゃる方には、施術の前に必ず3つ伺います。

 

 

  • 下りてから何日目か。翌日と3日目では、触れる場所も圧の強さも変えます
  • ひねった、打った場所がないか。ある場合はそこを避け、状態によっては受診をおすすめします
  • 次の予定はいつか。翌週も登る方と、今シーズン最後の方とでは、組み立てが変わります

 

 

その上で、その日の組み立てを決めます。まずはうつ伏せではなく、仰向けか横向きから始めることが多いです。太ももの前側が痛む方は、うつ伏せで膝を曲げる姿勢がつらいからです。触れる順番も、痛む脚からではなく、背中や腰、反対側の脚から入ることが多いです。ご希望に合わせて調整いたします。

 

脚に入るときは、痛む場所そのものではなく、その上下から始めることが多いです。太ももの前側が痛いなら、股関節の付け根と膝の上。ふくらはぎが張っているなら、足首とひざ裏。痛むところを避けながら、周辺から緩めていきます。

 

圧の強さも、その日に合わせます。筋肉痛が残っている脚に強い圧をかけても、体は緊張して逃げるだけです。痛みが強い日は、触れて温める時間を長くとり、動かす範囲を小さくします。「強いほうが効く」という感覚をお持ちの方もいらっしゃいますが、下山直後の脚にかぎっては当てはまりません。

 

全店舗が完全個室ですので、脚を出す服装への着替えや、眠ってしまうことを気にされる必要はありません。

 

終わったあと、その日のうちに「軽くなった」と感じる方と、翌朝になって違いに気づく方がいます。どちらが正しいというものではありません。筋肉痛そのものは、自然に引いていくものです。施術でしているのは、そこに余計な緊張を足さない、という程度のことだと考えています。

自分の手では、届かない場所がある

下山後に自分でケアをしようとすると、届く場所と届かない場所がはっきり分かれます。

 

太ももの前側やふくらはぎは、座って手が届きます。ところが、お尻の奥、股関節の前側、腰の深いところは違います。自分で押そうとすると押す側の腕と体幹に力が入るので、押される側が緩みきらないままになります。力を抜いたまま他の人に動かしてもらう、という状態は、ひとりでは再現しにくいのです。

 

タイ古式マッサージは、受け手が服を着たまま、脱力した状態で受ける形をとります。押すだけでなく、脚や股関節を動かしながら進めていくので、下山後に固まった股関節まわりとは相性がよいと考えています。

 

たとえば、うつ伏せで膝を曲げて太ももの前側を伸ばす動きは、ご自分でやろうとすると反対の脚と腰に力が入ります。横向きで股関節を開いていく動きも、自力では角度をつくれません。他の人に任せると、力を抜いたまま同じ角度に入れるので、伸びる場所が変わります。

 

ただし、受ければ筋肉痛が消えるというものではありません。運動後の回復手段を比べた研究では、マッサージの軽減幅がほかの方法より大きかったという結果が出ています。ただし、痛みがなくなることを示したわけではありません。この点は、ランニングの記事で詳しく書いたので、そちらもご覧ください。

体力の問題なのか、と聞かれることがあります

「こんなに筋肉痛になるのは、体力が落ちたからでしょうか」と聞かれることがあります。年齢の話とセットで出てくる質問です。

 

ここまで見てきたとおり、下山後の筋肉痛は、心肺の体力とは別のところで起きています。息が切れずに登れる方でも、下りで受け止める仕事が減るわけではありません。むしろ、登りに余裕がある方ほど下りのペースが速くなり、ブレーキの回数を短い時間に詰め込むことになります。

 

年齢による変化がないわけではありません。ただ、同じ方が同じ山に月2回通えば、シーズンの後半には筋肉痛が軽くなっていきます。「歳のせい」で片づけると、そこで打つ手がなくなってしまいます。下りの歩き方と、戻すまでの数日。手を入れられるのはこの2つです。

よくあるご質問

登山の翌日に筋肉痛がひどいのですが、マッサージを受けてもいいですか?

痛む場所を強く揉むのは、この時期はおすすめしません。当店では、痛みが出ている場所を避けて、腰や背中、股関節まわりを中心にお受けしています。ひねった、打ったという心当たりがある場合は、施術より先に整形外科にご相談ください。

登山の筋肉痛は、どのくらいで引きますか?

下山の翌日から出はじめて2日目あたりがピーク、そこから数日かけて引いていくのが一般的な流れです。ただし、下りの時間が長かった場合や、久しぶりの登山だった場合は1週間近く残ることもあります。1週間を過ぎても引かない、あるいは3日目以降にかえって強くなる場合は、筋肉痛とは別のことが起きている可能性があります。

登山でいちばん筋肉痛になりやすいのは、どこですか?

太ももの前側です。下りで体を受け止めるブレーキ役を担っているためで、階段を下りる動作でつらくなるのが特徴です。次いで、ふくらはぎ、お尻の奥、ザックを背負っていた腰から背中に出ます。

登山の後にストレッチをすれば、筋肉痛は防げますか?

防げるとはお伝えできません。運動後の静的なストレッチについては、複数の研究をまとめた分析で、筋肉痛を軽くする効果が確認されていません。下山直後にされる場合は、軽く張る程度にとどめてください。傷んだ筋肉を強く伸ばすと、損傷を広げる方向に働きうると考えられています。

登山の当日にマッサージを受けるのと、翌日以降に受けるのでは、どちらがいいですか?

目的によります。当日は、全身の疲れを落として眠りやすくすることが中心になります。翌日以降は痛みが出ている時期なので、場所を選びながらになります。張りや動かしにくさが気になるのであれば、痛みのピークを越えた3日目以降がおすすめです。

翌週も登山の予定があります。その前に受けたほうがいいですか?

受けるかどうかは、ご自身の疲れ具合で決めていただいて構いません。受けられる場合の時期は、前回の痛みが引いた3日目以降で、次の登山の2日前までをおすすめしています。痛みが残っている時期は、痛む場所を避けることになるためです。

下山後、温泉に入れば筋肉痛は軽くなりますか?

軽くなるとはお伝えできません。入浴が筋肉痛そのものを減らすかどうかは、研究でもはっきりした結論が出ていません。ただ、張って重い状態であれば、温まって楽に感じる方は多いです。熱を持っている場所があるときは長湯を避けてください。のぼせた状態での運転も危ないので、下山後の温泉は短めをおすすめします。

登山の前にマッサージを受けるのは、ありですか?

ありです。ただし前日ではなく、2日前までをおすすめしています。施術のあとは体が緩んでいるので、その状態で長い下りに入ると、踏ん張りが効きにくく感じる方がいるためです。日程が決まっている方は、逆算してご予約ください。

登山の翌日、痛みはないのに体がだるいのはなぜですか?

筋肉痛とは別の疲れが残っているためです。日帰りでも行動時間は5時間から8時間になり、早起きと短い睡眠、行動食中心の食事が重なります。運転で帰った方はさらに時間が加わります。こちらは寝て食べれば戻っていく種類の疲れなので、まず睡眠を確保してください。

まとめ

登山の翌日に脚が痛むのは、登ったからではなく、下りたからです。

 

下りでは、筋肉が引き伸ばされながらブレーキをかけ続けます。この働き方は筋肉に細かい損傷を起こしやすく、しかも呼吸は楽なので、つらさを自覚しないまま積み上がります。ザックの重さも、下りでは「止める対象」に変わって負担を増やします。

 

痛みが出るのは、太ももの前側、ふくらはぎ、お尻の奥、ザックを背負っていた腰から背中。このうち、お尻の奥、股関節の前側、腰の深いところは、ご自分では届きにくい場所です。

 

下山後のストレッチについては、筋肉痛を軽くする手段としては期待できない、というのが研究の結論です。それでも、動かせる範囲を戻す目的なら意味があります。軽く張る程度にとどめ、痛みを感じるところまで引っ張らないでください。

 

そして、ひねった、打った、腫れている、尿の色が濃いといった場合は、施術ではなく医療機関です。ここだけは迷わずに動いてください。

 

登山は、下りてきたところで終わりではありません。次にまた気持ちよく歩けるかどうかは、戻ってからの数日で決まります。とくに秋は、ひと月のあいだに何度か山に入る方が多い季節です。前回の脚が残ったまま次の下りに入ると、歩き方が崩れて、痛める場所が増えていきます。

 

秋の山は、これから紅葉が標高を下りてきます。次の山へ出かける前に、力を抜いて過ごす時間をとってみませんか。

 

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※当店の施術はリラクゼーションを目的としたものであり、医療行為ではありません。疾病の治療や症状の改善を目的とするものではなく、診断や治療は行っておりません。痛みが続く場合や気になる症状がある場合は、整形外科などの医療機関にご相談ください。

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