10月に入ると、施術の前のカウンセリングで「頭が重い」とおっしゃる方が増えます。夏の間はほとんど聞かなかった言葉です。朝晩が冷えはじめた週と、台風が通り過ぎた週に、はっきりと増えます。
ご本人は「季節の変わり目だから仕方ない」と流されることが多いのですが、体の中では説明のつく変化が起きています。気温の下がり方に自律神経が振り回され、気圧の変化を内耳が拾い、痛みを感じる側の設定が敏感なほうへずれる。この流れは、動物実験と人の調査から少しずつ組み立てられている途中で、まだ完成した説明ではありません。
この記事では、まず気象庁の平年値から「秋に何が起きているのか」を数字で確かめます。そのうえで、気圧と自律神経の仕組みを追いかけます。最後に、施術で触れていい頭痛と、触れずに受診をおすすめする頭痛の線引きをお伝えします。施術の効果についても、研究が示していることと、示せていないことを分けて正直に書きます。
頭の重さや痛みは、めずらしい訴えではない
頭の重さや痛みは、日本ではめずらしい訴えではありません。国民生活基礎調査は、厚生労働省が3年ごとに大規模に行っているものです。2025年の調査では、病気やけがなどで自覚症状のある人の割合が、人口千人あたり255.7人でした。男性233.2人に対して女性276.7人と、女性のほうが高く出ています。
症状の内訳は、男女とも腰痛と肩こりが上位に並びます。女性の順位で追いかけると、2022年の調査では第5位が頭痛で、人口千人あたり46.8人でした。2025年の調査になると、女性の上位5つは腰痛・肩こり・手足の関節が痛む・体がだるい・目のかすみです。頭痛はここから外れています。
つまり頭痛は、常に上位に居座る訴えというより、年によって順位が入れ替わる訴えです。サロンの現場では「秋になると増える」と感じていますが、調査は3年に一度、決まった時期に行われるものなので、季節ごとの波まではこの数字から読み取れません。そのぶん、ご自分の体で起きている変化のほうが、季節の影響を素直に映しているとも言えます。
じつは「1日の寒暖差」は、秋が特別大きいわけではない
秋の不調の話になると、「1日の気温差が10度を超えるから」という説明をよく見かけます。ですが、気象庁が公表している平年値(1991年から2020年の30年平均)を見るかぎり、そうとは言えません。1日の最高気温と最低気温の差は、秋がとりわけ大きいわけではありません。この記事でいう秋の寒暖差は、1日の中の差より、月ごとに気温が下がっていく差のほうを指しています。
| 月 | 東京の日平均気温 | 東京の日最高と日最低の差 |
|---|---|---|
| 8月 | 26.9度 | 7.8度 |
| 9月 | 23.3度 | 7.2度 |
| 10月 | 18.0度 | 7.2度 |
| 11月 | 12.5度 | 7.9度 |
| 12月 | 7.7度 | 8.2度 |
気象庁の平年値から、日最高気温と日最低気温の平年値の差を当店で計算したものです。月の平均でならすと、8月から12月まで7度から8度のあいだに収まります。参考までに、同じ計算で東京の3月は9.2度、4月は9.6度でした。1日の中の振れ幅でいえば、春先のほうがむしろ大きいのです。
では何が秋特有なのか。表の「東京の日平均気温」の列を、上から下へ見てください。東京は9月23.3度、10月18.0度、11月12.5度。ひと月に5度前後ずつ、平均気温そのものが落ちていきます。9月から10月で5.3度、10月から11月で5.5度、11月から12月も4.8度下がります。
体は、外の気温に合わせて血管を広げたり縮めたりしながら、深いところの体温を一定に保っています。夏のあいだ「熱を逃がす」側に寄っていた設定を、2か月で「熱を守る」側へ作り直すことになる。しかも西から東へ数日おきに高気圧と低気圧が通り過ぎていきます(移動性高気圧・移動性低気圧と呼ばれます)。その作り直しの途中で何度も揺さぶられます。1日の中の差より、この季節ごとの切り替えの速さのほうが、秋の体にはこたえているのではないかと考えています。
朝がいちばんつらい、という訴えが増える理由
秋になると「起きた直後が一日でいちばん重い」とおっしゃる方が増えます。1日の中の振れ幅は夏と変わらないのに、なぜ朝なのか。効いているのは、振れ幅ではなく下がりきった先の気温です。表には載せていませんが、東京の11月の平年値は、日最高気温が16.7度、日最低気温が8.8度でした。8月の日最低気温は23.5度ですから、明け方の冷え方がまるで違います。
眠っているあいだ、体は熱をつくる量を落としています。そこへ明け方の冷え込みが重なると、起き上がるときには体が冷えた状態から動き出すことになります。布団から出て、冷たい床に足をつけて、着替える。この数分で体は一気に「熱を守る」側へ切り替えます。首や肩がこわばった感じで目覚める朝は、この切り替えの真っ最中だと考えると説明がつきます。
ここで無理に体を動かそうとせず、上着を一枚羽織る、温かい飲み物を先に口にする。この順番にするだけでも、立ち上がりが楽だとおっしゃる方がいます。当店にいらっしゃる方には、秋は「朝のうちに体を温めてから動く」ことをおすすめしています。
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気圧が下がると痛みが出るのはなぜか。内耳が拾っている、という説
「雨の前に頭が重くなる」という話は、長いあいだ経験則として語られてきました。近年は、人の調査と動物実験の両方から、仕組みの説明が組み立てられつつあります。
どのくらいの下がり方で訴えが増えるのか
国内で行われた研究では、片頭痛のある28人に1年間、頭痛の記録をつけてもらい、気象台の観測データと突き合わせました。その結果、頭痛が起きた日の前後で気圧が5ヘクトパスカルを超えて下がっていたとき、発作の頻度が明らかに増えていました。参加者の6割強が、天候の変化と関連づけて頭痛を報告しています。
もっと大きな規模の調査もあります。スマートフォンの記録アプリに集まった4,375人・約33万7千件の頭痛の記録を解析した研究があります。頭痛が起きる6時間前の気圧の低下、湿度の高さ、降雨が、頭痛の増加と関連していました。
5ヘクトパスカルという幅は、台風でなくても秋の移動性低気圧なら普通に起きる変化です。特別な悪天候でなくても条件はそろう、と考えたほうが現実に近いようです。
気温のほうでも、似た規模の調査があります。救急外来を受診した7,054人の頭痛を分析した研究もあります。受診前の24時間の平均気温が5度上がるごとに、強い頭痛で受診する可能性が7.5パーセント高くなっていました。こちらは気温が「上がった」ときの話なので、秋の冷え込みにそのまま当てはめることはできません。秋の記事で引くには向かない研究ですが、短い時間での気温の動きが頭痛と関わりうる、という方向を示す材料ではあります。
気圧を感じ取っているのは、耳の奥だと考えられている
人には気圧を測る専用の器官はない、と長く言われてきました。この見方は、動物実験によって修正されつつあります。
痛みが出やすい状態にした実験動物を、人工の気象室に入れた研究があります。自然界で起きる程度の小さな気圧低下を与えると、痛みに対する反応が強くなりました。ところが、内耳の働きをなくした個体では、この反応が消えました。さらに、気圧を下げる刺激を与えたときに、内耳の奥にある神経の細胞で活動の目印になるたんぱく質が増えることもわかっています。耳の奥の、平衡感覚に関わる神経が反応していた、ということです。ただし、耳の奥のどこで気圧を感じているかは、まだ絞り込みの途中です。
内耳が気圧の変化を拾うと、その情報は脳幹へ伝わり、体にとっての「警報」として働きます。同じ時期に、下がった気温が皮膚の冷たさを感じるセンサーを刺激します。気圧と気温、二方向からの信号が重なることで、体は守りの姿勢に入る。ここまでが、動物実験から組み立てられた説明です。人で同じ順番を確かめた研究は、まだありません。
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守りの姿勢に入った体で、何が起きているか
ここからは、確かめられていることと、まだ仮説として語られていることを分けて書きます。
確かめられているのは、寒さに対して体が熱を逃がさないように働く、という部分です。皮膚や筋肉の血管が縮み、その場所の血の巡りが落ちます。慢性的に頭が締めつけられるタイプの頭痛を抱えている方について、いくつもの研究で確認されていることがあります。痛みを感じはじめる圧の強さが、そうでない方より低くなっていることです。同じ強さで押されても、痛いと感じやすい状態にあるということです。
仮説の側に置かれているのは、その間をつなぐ説明です。血の巡りが落ちた筋肉に痛みのもとになる物質がたまり、それが痛みのセンサーを刺激して、敏感さがさらに増していく。この流れは筋道としては通っていますが、人の体の中で順番どおりに起きていることを直接確かめた研究があるわけではありません。気圧が下がったときに組織の酸素の使われ方が落ちる、という説明も、いまのところ仮説の段階です。
当店で見ているかぎり、この時期は首の後ろから肩にかけてがはっきり硬くなる方が多いです。ただ、それが頭痛の原因なのか、頭痛があるから体をかばって硬くなるのかは、施術者の側から言い切れるものではありません。どちらが先かを決めずに、触れられる範囲で緩めていく。私たちの仕事はそこまでです。
「原因はここです」と断言するサロンを見かけたら、少し立ち止まってみてください。体の中で起きていることのうち、外から確かめられる部分はそれほど多くありません。原因を特定して取り除くのは医療機関の仕事で、私たちはその手前にいます。
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女性の訴えが多いことには、理由がある
先ほどの調査でも、自覚症状のある人の割合は女性のほうが高く出ていました。当店でも、頭痛のご相談は女性からのほうが多くいただきます。
背景のひとつとして確かめられているのは、女性ホルモンの変動が片頭痛の誘因になる、という点です。排卵のあとから月経の直前にかけて、エストロゲンと呼ばれるホルモンの量が急に下がります。このホルモンは、痛みを抑える側の神経の働きに関わる物質とつながっています。ですので、量が下がる時期は痛みに対する備えが薄くなると考えられています。
ここから先、「その時期に気圧の低下が重なると何倍にもなる」といった説明を見かけることがあります。ただ、そこまでの数字を示した研究は見当たりませんでした。言えるのは、ホルモンの変動が誘因のひとつとして確立していること、そして天候の変化もまた誘因のひとつであることまでです。両方が重なる時期があることは事実ですが、足し算の大きさを断定はできません。
40代を過ぎてからの重なり
もうひとつ、現場でよく聞くのが40代から50代の方の声です。「若い頃は雨の前でもここまでではなかった」とおっしゃいます。
この年代はホルモンの量そのものが揺れながら下がっていく時期にあたります。月経のリズムに合わせた上下動だけでなく、数年がかりの変化が背景に加わるわけです。そこに秋の気温低下と気圧の上下が重なるので、同じ天気でも体の受け取り方が以前と違ってくる、という説明はつきます。
ただし、この年代の不調は頭痛だけで語れるものではありません。眠りが浅い、汗のかき方が変わった、気分が落ち込む。こうした変化が同時に出ている場合は、一度婦人科や内科でご相談いただくほうが早い場合もあります。サロンでできるのは、緩む時間をおつくりすることまでです。
その頭痛は、ほぐしていいものか
頭が重いという同じ言葉でも、体に触れていい状態と、触れないほうがいい状態があります。
医療の世界では、脈を打つように痛むタイプを片頭痛、締めつけられるように痛むタイプを緊張型頭痛と呼びます。この記事では、ご自分の感覚で見当がつくように、痛み方のほうで呼んでいます。どちらの特徴も混ざることがありますし、見分けそのものは医療機関の役割です。
| 見分ける点 | 脈打つタイプ | 締めつけられるタイプ |
|---|---|---|
| 痛む場所 | 片側が多い。こめかみから目の奥にかけて | 両側。後頭部から首すじ、または頭全体が鉢巻き状に |
| 痛み方 | ズキズキと脈に合わせて響く | ギューッと締めつけられる、重い鈍さ |
| 続く時間 | 4時間から72時間ほど | 30分から数日 |
| 体を動かすと | 歩く、階段を上るなどで悪化しやすい | 日常の動作で悪化することは少ない |
| ほかの症状 | 吐き気を伴う。光や音がつらく感じる | 吐き気は伴わない。光か音のどちらかがつらいことはある |
国際的な頭痛の分類で示されている典型的な特徴を、当店で読みやすく整理したものです。
そのうえで当店の運用をお伝えすると、脈打つ痛みが出ている最中は、頭と首への施術はお受けしていません。発作の最中に頭や首を強く揉むと痛みや吐き気が強まることがある、というのは施術の現場で広く共有されている考え方です。ただし、この点をはっきり示した研究にはたどりつけませんでした。根拠の強さでいえば経験則に近いものですが、強く揉んで悪化した場合に失うものが大きいので、当店は控える側に立っています。
締めつけられるタイプで、日常の動作では悪化せず、受診が必要なサインもない場合。このときは、首や肩、背中に触れていく形でお受けしています。圧は弱めから始めることが多く、その日の状態とご希望に合わせて調整いたします。
施術より先に、受診していただきたいサイン
次のような頭痛は、急いで医療機関に相談していただきたい種類のものです。当店ではこの場合、施術をお断りし、受診をおすすめしています。
- バットで殴られたような、突然はじまった激しい痛み
- 発熱、体重の減少、強い倦怠感を伴う痛み
- 手足の力が入らない、しびれる、言葉が出にくい、物が二重に見える
- 50歳を過ぎてから初めて経験するタイプの頭痛
- いつもの頭痛とは明らかに性質が違う、または日を追うごとに強くなっていく
- 立ち上がると強く痛み、横になると楽になる
- 咳やくしゃみ、いきんだときに誘発される
- がんの治療歴がある方の、新しく出てきた頭痛
- 頭を打ったあとに始まった頭痛
これらは、脳や血管、感染など、体の奥で起きている変化が頭痛という形で表に出ている可能性を考える必要がある状態です。マッサージで様子を見ていい段階ではありません。判断に迷われるときは、施術の予約より先に医療機関へお電話いただくほうが安全です。
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施術で何が起きて、何が起きないのか
マッサージや手技が頭痛にどう働くのかは、世界中で研究されています。研究によって、結果はばらついています。効果を認めたものと、差が出なかったもの、両方をお見せします。
効果が確認された側
慢性的に締めつけられるタイプの頭痛がある82人を対象にした比較試験があります。首の関節を動かす手技と姿勢の指導、首の深い筋肉を働かせる運動を組み合わせた群がありました。これを、かかりつけ医による通常の対応を受けた群とくらべます。8週後と26週後のどちらの時点でも、頭痛の日数が大きく減りました。あとから行われた分析では、この差の4分の1ほどが「首の筋肉の持久力が上がったこと」で説明できたとされています。ただし、これはマッサージ単独ではなく、手技と姿勢の指導と運動を組み合わせた結果です。どの要素がどれだけ効いたのかまでは、この試験からは分かりません。
タイ古式マッサージを対象にした比較試験もあります。慢性的な頭痛のある72人を、3週間で9回の施術を受ける群と、装置の電源を入れない偽の治療を受ける群に分けました。施術を受けた群では、痛みを感じはじめる圧の強さが偽の治療の群より明らかに上がりました。押されても痛いと感じにくくなった、ということです。
差が出なかった側
同じ研究には続きがあります。頭痛そのものの強さは、どちらの群でも下がったのですが、群の間に差はありませんでした。圧に対する感じ方は変わっても、頭痛の強さの変化は偽の治療と区別がつかなかったということです。
締めつけられるタイプの頭痛がある56人を、3群に分けた試験もあります。こりの強い部分に狙いを定めたマッサージ、偽の治療、順番待ちの3つです。6週間後、頭痛の頻度はマッサージの群でも偽の治療の群でも減りましたが、両群の間に差は見られませんでした。研究チームは「このタイプの頭痛は、見せかけの治療にもよく反応する」と結論づけています。
ただし、この試験にはもう一段あります。「よくなったと感じたか」を本人に尋ねた項目では、マッサージの群のほうが偽の治療の群より高く出ました。押されたときに痛いと感じる強さも、マッサージの群だけ変わっています。日記に記録された頭痛の回数では差がつかず、本人の実感と体の反応では差がついた。この食い違いが、施術というものの立ち位置をよく表しているように思います。
頭痛ではなく、肩や膝、腰、首などの痛みについて、26件の試験をまとめた分析もあります。肩の痛みや膝の関節の痛みでは、マッサージが「何もしない」場合より短期的に痛みを和らげていました。首と腰の痛みでは、差が出ていません。ほかの積極的な方法とくらべて優れているとも言えない、と整理されています。手技全般を見直した別のまとめでも、軟らかい組織へのアプローチの効果は「限定的」と評価されています。
偽の治療でも減ったという結果を、どう読むか
ここで引っかかるのは、「偽の治療でも頭痛が減っている」という点ではないでしょうか。2つ目にご紹介した56人の研究では、見せかけの手当てを受けただけの人たちも、頭痛の頻度が減っていました。
この現象は、手当てを受けるという状況そのものが体に働きかけている、と説明されます。予約をして出かけ、静かな部屋に通され、専門の人が自分の体に時間をかけてくれる。その一連の流れが、痛みの受け取り方を変えているという見方です。研究の世界では、この働きを差し引いた分を「その手技だけの効果」と呼びます。頭痛の頻度と強さについては、差し引くとほとんど残らなかった、というのが先ほどの結果です。本人の実感では差が残り、押されたときの痛みの感じ方はマッサージの群だけで変わっていました。
私たちはこれを、施術が無意味だという話とは受け取っていません。お客様にとっては、差し引く前の状態のほうが現実的だからです。とはいえ、「この手技だから効く」と言い切れるだけの根拠がないことは事実です。そこは正直にお伝えしたうえで、ご予約いただきたいと考えています。
比べた相手が、研究ごとに違う
ここで気をつけたいのは、それぞれの研究が何と比べているかです。「いつもの通院」や「何もしない」と比べたときには差が出て、「見せかけの手当て」と比べると、頭痛の頻度や強さの差は消えます。手技の中身も研究ごとに違うので、手技そのものの効果と、手当てを受ける時間を持つことの効果は、まだ切り分けきれていません。
ここから言えること
研究が示しているのは、「マッサージには、偽の治療を上回る特別な治療効果がある」とは現時点で言えないということです。当店はリラクゼーションのサロンですから、そもそも治療を行う立場にありません。この結果を、都合が悪いから隠すということはしたくないと考えています。
いっぽうで、圧に対する感じ方が変わったことは測定されています。静かな部屋で、人の手が一定のリズムで触れていく時間そのものが体に働きかけている可能性は、研究の側からも否定されていません。頭の重さが消えることについては、お約束の外に置いています。ただ、張り詰めた状態のままで秋を越すより、緩む時間を挟んでいただくことには意味がある。そう考えて、私たちは毎日この仕事をしています。
ご自分でできること、できないこと
施術は毎日受けられるものではありません。次に体を預けるまでの間に、ご自分でできることを整理しておきます。
記録をつけると、自分の傾向が見えてくる
先ほど紹介した研究は、どちらも参加者が記録をつけたことで成り立っています。1年間の頭痛日記と気象データを突き合わせた結果、5ヘクトパスカルという数字が出てきました。アプリの解析も、利用者が「いつ痛くなったか」を記録したデータの集まりです。
同じことは個人でもできます。痛くなった日付と時間、痛み方、そのときの天気。この3つをメモしておくだけで、数週間後には自分の傾向が見えてきます。手帳の端でもスマートフォンのメモでも構いません。続けやすい場所に書くことのほうが、形式より大事です。低気圧が近づく前日に来るのか、冷え込んだ翌朝なのか、眠りが浅かった日なのか。傾向がつかめると、その日の予定の組み方が変わります。準備できる不調は、同じ強さでも楽に感じられるものです。
温めることと、睡眠を削らないこと
体を冷やさない工夫は、根拠の強さでいえば「秋は気温が下がる」という当たり前の事実に支えられているだけです。それでも、首元を覆うもの、朝晩の上着、足元を冷やさない靴下といったところは、費用もかからず失うものもありません。
睡眠のほうは、足りないことが頭痛の引き金になると分かっています。天候の変化も、ホルモンの変動も、自分では動かせません。動かせるのは、眠る時間と体を冷やさない工夫です。動かせるほうから手をつけるのが現実的だと考えています。秋は日が短くなるぶん夜の時間が長く感じられますが、その時間を睡眠に回せるかどうかで、翌朝の立ち上がりは変わります。
自分の手では届かないところ
いっぽうで、ご自分では届きにくい場所もあります。後頭部から首すじにかけて、肩甲骨の内側、背中の深いところ。腕を回して押そうとすると、押している側の筋肉に力が入るため、押される側が緩みきりません。力を抜いたまま他の人に動かしてもらう、というのは自力では再現しにくい状態です。
タイ古式マッサージは、受け手が完全に脱力した状態で、他の人が体を動かしていく形をとります。当店が「自分でストレッチをしても届かない場所がある」と申し上げているのは、この違いのことです。もっとも、そこに触れれば頭痛がなくなる、という話ではありません。緩む時間をつくる手段のひとつ、という位置づけでお考えください。
秋のご予約で、当店がしていること
気温が下がりはじめると、施術の組み立ても変わります。セラピストやその日のご希望によって変わりますが、多いのは次のような進め方です。
- 室温と足元を先に整える。体が冷えた状態では、どれだけ触れても緩みにくくなります。お部屋を暖めておき、足元から温めていくことが多いです
- 圧は弱めから入ることが多い。痛みを感じやすい状態にある方に強い圧は向きません。ご希望に合わせて調整いたします
- 頭と首は、その日の状態を伺ってから。脈打つ痛みが出ている日は触れません
- 完全個室で、音と光を落とす。全店舗が完全個室です。光や音がつらい日には、そこがいちばん楽だとおっしゃる方もいます
その日の体調と、触れてほしくない場所を、施術の前に遠慮なくお伝えください。
タイ古式マッサージは、受け手が服を着たまま、脱力した状態で受ける形をとります。オイルを使うバリニーズアロマとは、体の動かし方も、終わったあとの感じ方も変わります。頭が重い日にどちらが向いているかは、その日の状態によりますので、ご予約の際にご相談いただければ一緒に考えます。強い刺激がつらい日は、圧をかけずに手を添えていく時間を長めにとることもできます。
よくあるご質問
秋の寒暖差で頭が重いとき、マッサージを受けても大丈夫ですか?
ズキズキと脈打つ痛みが出ている最中は、当店では頭と首への施術をお断りしています。それ以外で、「受診していただきたいサイン」にも当てはまらなければ、その日の状態をうかがったうえでお受けしています。いつもと違う痛み方で、ご自分でどちらのタイプか決めきれないときは、施術より先に医療機関でご相談ください。
気圧が下がると頭が痛くなるのは、気のせいではないのですか?
気のせいとは言えません。頭痛の記録と気象データを突き合わせた研究では、気圧が5ヘクトパスカルを超えて下がったときに、発作が増えていました。アプリに集まった33万件を超える記録の解析でも、頭痛の6時間前の気圧低下との関連が示されています。天気が崩れると頭が痛くなる、という訴えには、こうした裏づけがあります。
寒暖差による頭痛は、マッサージで治りますか?
治るとはお伝えできません。当店はリラクゼーションを目的としたサロンで、治療を行う立場にないからです。研究を見ても、マッサージに偽の治療を上回る特別な効果があるとは、現時点では言えない状況です。押されたときに痛いと感じる強さが変わった、という測定結果はあります。
秋のマッサージは、どのくらいの間隔で受けるのがいいですか?
根拠のある間隔の目安は、研究の側からは示されていません。先ほどの比較試験では3週間で9回という設計でしたが、これは研究のための回数です。当店では、気温が大きく下がる10月から11月にかけて、2週間から3週間に1度のペースでお越しになる方が多いです。体の状態と生活のご都合に合わせてお決めください。
頭痛のときに、自分で首や肩を揉んでもいいですか?
締めつけられるタイプで、軽く触れる程度であれば、多くの方がされていることです。強く押し込むことはおすすめしません。痛みを感じやすい状態にあるときは、強い刺激がかえってつらく感じられます。脈打つ痛みが出ている最中は、揉むこと自体を控えてください。
毎年同じ時期に頭が重くなるのですが、これは体質ですか?
体質という言葉で片づけるより、条件が毎年同じように揃っていると考えるほうが実際に近いと思います。9月から12月にかけては、平均気温がひと月に5度前後ずつ下がり、高気圧と低気圧が数日おきに通り過ぎていきます。同じ季節に同じ変化が来るので、同じ時期に同じ反応が出ます。頭痛の記録と天気をメモしておくと、自分がどの条件で反応しているのかが見えてきます。
マッサージを受ける際、気をつけることはありますか?
その日の頭の状態を、施術の前に正直にお伝えください。当店が知りたいのは、3点です。痛みがどのタイプか、いつから続いているか、この記事の「受診していただきたいサイン」に当てはまるものがあるか。脈打つ痛みが出ている日は、頭と首以外の場所だけにする、日を改めていただく、といったご提案をします。また、体が冷えたままだと緩みにくいので、寒い日は一枚多めに羽織ってお越しください。
冷え対策をすれば、秋の頭痛は減りますか?
減らすことをお約束はできませんが、体を冷やさない工夫に損はありません。この記事で見たとおり、秋はひと月ごとに平均気温が5度前後下がります。朝晩の上着、首元を覆うもの、足元を冷やさない靴下といったところから始めてみてください。
まとめ
秋に頭が重くなる背景を、気象庁の平年値と国内外の研究から追いかけてきました。長くなったので、要点を並べ直します。
1日の中の寒暖差は、気象庁の平年値で見るかぎり秋が特別大きいわけではありませんでした。当店が効いているのではないかと見ているのは、ひと月ごとに5度前後ずつ下がっていく、季節の切り替えの速さです。体は熱を守る側へ設定を作り直しながら、数日おきに通り過ぎる高気圧と低気圧に揺さぶられます。
気圧の低下は、内耳が拾っていると考えられています。5ヘクトパスカルを超える低下は、台風でなくても起きる程度の変化です。そのくらいの低下で、頭痛の訴えは増えます。寒さと気圧、両方の信号が重なると体は守りの姿勢に入り、痛みを感じる側の設定が敏感なほうへずれる。そういう説明が組み立てられつつありますが、人の体でその順番どおりに起きていることを確かめた研究は、まだありません。
そして大事なのが、ほぐしていい頭痛かどうかの線引きです。突然の激しい痛み、発熱を伴う痛み、手足の力が入らない、50歳を過ぎて初めて経験する頭痛。これらは施術ではなく受診です。脈打つ痛みが出ている最中も、当店は頭と首に触れません。
施術については、研究が示していることをそのままお伝えしました。手技そのものに、偽の治療を上回る特別な効果があるとは現時点では言えません。いっぽうで、押されたときに痛いと感じる強さが変わったことが測られています。手当てを受ける状況そのものが痛みの受け取り方を変えることも、わかっています。
そのうえで、締めつけられるタイプの重さを抱えたまま秋を越そうとされている方には、緩む時間を挟むことをおすすめしています。治すためではなく、張り詰めたままにしないために。季節が切り替わるまでの10月と11月を、少しでも楽に過ごしていただければと思います。
ご来店の日は、施術の前に、その日の頭の状態をお聞かせください。脈打つ痛みが出ている日は、頭と首への施術をお断りしています。
タイ古式マッサージとバリニーズアロマの2つに専門特化し、全店舗を完全個室でご用意しています。セラピストは15日間の研修と卒業試験を経て現場に立っていますので、初めての方もご安心ください。
※当店の施術はリラクゼーションを目的としたものであり、医療行為ではありません。疾病の治療や症状の改善を目的とするものではなく、診断や治療は行っておりません。頭痛が続く場合や気になる症状がある場合は、脳神経外科や内科などの医療機関にご相談ください。

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