タイ古式マッサージ

肩甲骨はがしに効果はあるのか。「意味がない」と言われる理由を、研究に当たって確かめました

「肩甲骨はがしって、意味がないんですか」。当店でそう尋ねられることがあります。危ないと聞いた、なぜだめなのかと書かれていた、という形でも伺います。

 

施術を提供する側としては、触れにくい話です。ただ、お客様が気にされていることを飛ばして書いた記事は、読む意味を失います。

 

この記事では、「意味がない」という指摘が何を根拠にしているのかを、実際の研究に当たって確かめます。そのうえで、当店がこの言葉を使っていない理由をお伝えします。

 

先に結論の一部を書きます。肩甲骨を動かす手技について、効果が出なかった研究と、出た研究の両方があります。そして出たほうの2本は、どちらも単独の施術ではなく、ほかの方法に足した形でした。

「肩甲骨はがし」という言葉は、医学の用語の外にあります

まず、言葉の整理をします。肩甲骨はがしは、医学で定義された用語の外にある呼び名です。肩甲骨のまわりを動かしたり伸ばしたりする手技に、後から付いた呼び名です。

 

定義がないため、同じ名前でも中身が違います。ゆっくり動かすだけのものから、指を差し込んで引き剥がそうとするものまで、同じ言葉で呼ばれています。

 

批判の出発点はここにあります。「肩甲骨はがしは意味がない」という指摘は、どの中身を指しているのかによって、当たっている場合と外れている場合に分かれます。

肩甲骨は、剥がれるのではなく、すべって動きます

言葉のイメージについて、一点だけはっきり書きます。肩甲骨は、背中の上をすべるように動く骨です。肋骨との間に少しのすき間があり、そこを滑って位置を変えます。

 

ですので、くっついているものを剥がすという説明は、実際とずれています。動きが出にくくなっているときに、動く範囲を広げる操作が行われている、という理解が実際に近いです。

 

この違いは、実務に関わります。「剥がす」という言葉を信じると、強く引けば引くほどよいという発想になります。その発想の危うさについては、あとの節で公表されている事故の件数と事例を示します。

 

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肩のこりは、多く挙げられる自覚症状のひとつです

その前に、この話がどれくらいの人に関わるのかを置いておきます。

 

厚生労働省の国民生活基礎調査は毎年行われ、3年ごとに大規模な調査になります。直近の大規模調査は2025年、令和7年です。病気やけがなどで何らかの自覚症状がある人は、人口千人あたり255.7人となっています。

 

この255.7人は、症状に限らない全体の数字です。症状別に見ると、男女とも腰痛がいちばん多くなっています。その次が、男性では頻尿、そして肩こりです。女性では肩こり、そして手足の関節の痛みと続きます。

 

つまり肩のこりは、男性で3番目、女性で2番目に多く挙げられる自覚症状です。原典には症状ごとの数字も載っていますが、2つの調査年の値が並ぶ形なので、この記事では順位だけをお伝えします。

 

これだけ多くの方が感じているからこそ、強い言葉のメニューに人が集まります。「はがす」という言葉の強さは、そこに向けて作られたものだと思います。

よく見かける損失額の数字は、出典を確かめられませんでした

肩こりや腰痛による経済的な損失が年間で何兆円という数字を、記事でご覧になったことがあるかもしれません。当店でも出典を探しましたが、たどりつけませんでした。

 

ですので、この記事にその数字は出しません。確かめられた数字と、確かめられなかった数字を分けて扱います。

「意味がない」と言われる根拠を、研究に当たって確かめました

ここが、この記事の中心です。肩甲骨を動かす手技について、公表されている研究に当たりました。

 

効果が出なかったものと、出たものの両方があります。順に書きます。

五十肩では、ほかの治療に勝てませんでした

2023年に医学の雑誌に載った、まとめの研究があります。肩が上がらなくなる状態、いわゆる五十肩の方を対象に、肩甲骨を動かす手技の効果を調べた無作為化試験を集めたものです。

 

集まった試験は6本でした。肩の外向きの回り方、腕の上げ方、肩の障害の程度、痛みの強さの4つで比べています。

 

結果は、いずれの項目でも、ほかの手技やほかの治療と比べて意味のある差が出ませんでした。まとめの結論も、はっきりした臨床的な利益はもたらさない、という書き方になっています。

 

証拠の確実性については、とても低いものから中程度までと評価されています。つまり、この結論自体も、強さとしては弱い側にあります。

首の痛みでは、足したときに差が出た報告があります

別の研究では、違う結果が出ています。首の痛みと肩甲骨の動きの異常がある46名を対象にした無作為化試験です。2018年に発表されました。

 

この試験では、肩甲骨と胸郭に対する手技を理学療法に足した群と、理学療法だけの群を比べています。1週間のうちに5回の施術を行う形です。

 

結果として、足した群のほうが、痛みの強さ、握る力、腕と首の障害の程度で良い変化が出ました。このうち痛みと握る力については、1回目のあとの時点でも差が出ています。

 

もうひとつ、2024年の報告があります。慢性的で、画像などに原因が出ない首の痛みがある30名を、3つの群に分けて6週間観察したものです。1群あたり10名という小さな規模です。

 

運動だけの群、運動に首を自分で動かす訓練を足した群、運動に首と胸を自分で動かす訓練を足した群の3つです。3群ともに痛みと機能が良くなりました。そして足した2群のほうが、首の動く範囲と生活の質で良い結果でした。

 

この1本については、先にお断りが必要です。足されたのは、首と胸の背骨をご自分で動かす訓練です。肩甲骨への手技とは別のものになります。さらに、土台の運動には肩甲骨を安定させる訓練が3群すべてに入っていました。

 

ですので、この報告から肩甲骨への働きかけの分だけを取り出すことはできません。肩甲骨のまわりに関わる研究として、参考に並べています。

 

研究 何に対する手技か 対象 人数と期間 結果
まとめの研究(2023年) 肩甲骨を動かす手技 五十肩 無作為化試験6本 ほかの手技やほかの治療と比べて、4つの項目すべてで意味のある差が出なかった
無作為化試験(2018年) 肩甲骨と胸郭に対する手技 機械的な首の痛みと、肩甲骨の動きの異常 46名、1週間に5回 理学療法に足した群のほうが、痛み、握力、障害で良かった
無作為化試験(2024年) 首と胸の背骨を自分で動かす訓練(肩甲骨への手技ではない) 慢性的で原因が画像に出ない首の痛み 30名を3群、6週間 3群とも改善し、足した2群が首の動く範囲と生活の質で良かった

 

 

3本を並べると、傾向が見えてきます。

この3本から言えること、言えないこと

並べたうえで、読み取れることを書きます。

差が出た2本は、どちらもほかの方法に足した形でした

効果が出た2本は、どちらも単独の施術ではありません。理学療法に足した形、運動に足した形です。

 

効果が出なかった1本は、比べ方に注意が必要です。まとめの対象には、肩甲骨を動かす手技を単独で行ったものと、ほかの治療に足して行ったものの両方が含まれていました。そして比べた相手も、ほかの手技やほかの治療です。つまり、足した形は差が出なかった側にも含まれており、足したから差が出た、とまでは言い切れません。

 

ですので、この1本から読み取れるのは「ほかの治療より優れているとは示されていない」までです。何も効かないという意味からは離れています。比べられた相手も治療を受けているからです。

 

「肩甲骨はがしは意味がない」という指摘は、肩甲骨を動かす手技だけで十分とは言えない、という意味であれば、言い過ぎではありません。そこまでは、材料がそろっています。

五十肩での結果も、そのまま広げることはできません

公平を期すために、否定の側にも同じ注意を向けます。2023年のまとめが扱っていたのは、五十肩と呼ばれる特定の状態です。

 

その結果を、肩甲骨のまわりが張っていると感じるすべての方に当てはめることもできません。効くほうへ広げるのも、効かないほうへ広げるのも、同じ飛躍になります。

自分で動かす訓練が含まれているのは、2024年の報告です

2024年の報告で足されていたのは、自分で動かす訓練でした。他の人に動かしてもらう施術とは別のものです。2018年の試験のほうは、施術者が行う手技でした。

 

ここは、サロンとして都合の悪い部分です。隠さずに書きます。良い結果が出た条件の中に、受け手が自分で動かすことが含まれています。

観察された期間は、1週間から6週間です

観察された期間は、2018年が1週間、2024年が6週間です。2023年のまとめについては、追跡期間を抄録から確かめられませんでした。半年後や1年後がどうなるかについて、この3本は答えていません。

 

「続けると体質が変わる」という説明を見かけますが、この3本を根拠にすることはできません。

「意味がない」と言う人と「効いた」と言う人は、別のものを見ています

研究を並べて分かったことを、もう少し噛み砕きます。

 

この話が噛み合わない理由は、2つの立場が別のことを問うているからです。

 

立場 問うていること その答え
「意味がない」と言う側 動かす手技だけで、肩の状態が変わるのか まとめの研究では、はっきりした利益が示されていない
「効いた」と言う側 受けたあとに、肩が軽く感じられたか 軽く感じた方は実際におられる。短い期間での差も報告がある

 

 

どちらも、嘘をついてはいないのです。問いが違うため、答えも違います。

 

この食い違いは、肩甲骨はがしに限った話でもありません。手技の効果をめぐる議論は、たいてい同じ形で噛み合わなくなります。研究は群と群を比べ、受け手は自分の体の前後を比べているからです。

 

群で比べると差が消えても、ご自分の体では変化が残ることがあります。逆に、研究で差が出た手技でも、ご自分には合わないこともあります。どちらも起こりうる話として置いておいてください。

 

当店がこの記事で採っている立場は、両方を並べて書くことです。軽く感じられることは起こります。そして、それが何週間も続くことをお約束できる材料は見つかっていません。

「肩甲骨の動きの異常」という言葉について

研究の中で、肩甲骨の動きの異常という言葉が出てきます。肩甲骨が本来の動き方から外れている状態を指す言葉です。

 

2018年の試験は、この状態がある方を選んで行われました。つまり、動きの異常がある方に手技を足した場合の結果です。

 

ここも読み分けが必要です。動きの異常がある方での結果を、肩が重いと感じるすべての方に当てはめることはできません。

「1回で効果はありますか」への答え

いちばん多い質問です。公表されている研究から答えます。

 

2018年の試験では、1回目の施術のあとの時点で、痛みの強さと握る力に差が出ています。ですので、1回で変化が出た報告は存在します。

 

ただし条件がつきます。その1回は、理学療法に足された1回でした。そして観察は1週間のうちの話です。

 

当店としての答えは、こうなります。1回で軽く感じられる方はおられます。その軽さが何週間も続くかどうかについて、お約束できる材料は持っておりません。

 

6週間で良い結果が出た報告もありますが、あれは運動と自分で動かす訓練についてのものです。施術を受けた軽さが何週間も続くことを示す材料は、別に探しても見つかりませんでした。

当日の感覚と、数日後の状態は別の話です

施術の直後に軽く感じることと、数日後も軽いことは、別の現象として扱います。前者は多くの方が感じられます。後者は人によって差が出ます。

 

当店では、ここを混ぜずにご説明しています。直後の軽さを根拠に「続ければ治ります」という案内をしておりません。

「どれくらいで効果が出る」への答え

これも、ご予約のときによく伺います。正直に書くと、期間の目安を示せる根拠は見つかりませんでした。

 

手がかりになるのは、観察された期間です。1週間に5回で差が出た報告と、6週間で差が出た報告があります。どちらも、その期間のうちに測った結果です。効果が何か月続くかを示した材料は、見つかっていません。

 

「3回で変わります」「10回で姿勢が整います」という言い方の根拠を、当店は持っておりません。ですので、回数券を前提としたご案内もしておりません。

目安を示せないことを、そのまま書きます

期間の目安を示したほうが、ご予約は取りやすいのだと思います。それでも書かないのは、示せる根拠がないからです。

 

かわりに、ご自分で確かめる方法をお伝えしています。施術の翌日、3日後、1週間後に、肩の重さを10段階で記録していただく形です。ご自分の体での結果が、いちばん確かな材料になります。

「効果」を何で測るかによって、答えが変わります

 

研究を読んでいて気づくことがあります。効果という言葉が、研究ごとに別のものを指しています。

 

先の3本で測られていたものを並べます。

 

測られていたもの どう測るか 受け手の実感との距離
肩が動く範囲(2023年) 外向きの回り方や腕の上げ方の角度を計る 動かしたときに気づきやすい
首が動く範囲(2024年) 倒す、ひねるなどの角度を計る 動かしたときに気づきやすい
痛みの強さ 本人が点数で答える 実感に近い
肩や首の障害の程度 決まった質問に答えて点数にする 生活の不便さに近い
握る力 器具で計る 日常では気づきにくい
生活の質 決まった質問に答えて点数にする 広い範囲をまとめた点数になる

 

 

この表に、「受けたあとの軽い感じ」は入っていません。研究で測られているのは、角度や点数や力です。

 

ですので「効果がある」「効果がない」という言い方は、何を測った話なのかで中身が変わります。軽く感じたという実感は、研究の項目とは別のところにあります。

 

当店がご案内でお伝えしているのは、実感の側です。研究で測られた項目が動くことを、お約束する形にはしておりません。

背中が張っているのに、原因が前側にあることがあります

肩甲骨のまわりが張っているとき、張りを感じるのは背中側です。ところが、動きを妨げているのは前側だという説明があります。

 

胸の深いところには、肋骨から肩甲骨の前の出っぱりへ向かう筋肉があります。前かがみの姿勢が長く続くと、この筋肉が短くなり、肩甲骨を前へ引き込んだ位置で止めてしまう、という説明です。

 

そうなると、背中側の筋肉は縮んでいるのではなく、引き伸ばされた状態で支え続けることになります。張って感じるのに、揉んでもすぐ戻る理由として、この説明が使われます。

この説明は、仮説の側に置いています

お断りしておくと、ここでは確かめられたこととしては書けません。前側の筋肉の短さが、肩甲骨の位置をどれだけ決めているのか。これを人の体の中で直接測ることは難しく、順番どおりに起きていると言い切れる材料は、まだ出ていません。

 

当店が胸の前側や脇にも手を入れるのは、この説明に沿った判断です。確かめられた事実としてではなく、理にかなった見方として採っています。

 

前側に触れるときは、強い圧をかけません。太い血管と神経が通る場所だからです。

 

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肩を回すとジャリジャリ音がするとき、分かっていること

これも、施術中によく伺う問いです。肩甲骨のあたりで音が鳴る現象について、2015年に出た総説があります。

 

この総説では、痛みを伴う肩甲骨の音や、肩甲骨と肋骨のあいだにある袋の炎症は、まれであると書かれています。あわせて、見逃されやすい状態でもあるとされています。関連する研究81本のうち36本が、10人に満たない人数をまとめた報告でした。

 

読み方としては、2つになります。痛みを伴う状態になるのはまれで、同時に見逃されやすいとされていること。そして、その領域の研究は、まだ小規模なものが中心であることです。音が鳴る理由そのものについては、ここで確かな説明をお伝えできる材料がありません。

音を鳴らすことを目的にしない、という方針です

音が鳴るとすっきりした感じがするため、鳴らすこと自体が目的になることがあります。当店は、この形を採っておりません。

 

理由は2つあります。鳴らすことで状態が良くなるという根拠を持っていないこと。そして、引っ張る操作やねじる操作による事故の事例が、公表されていることです。

 

音が気になる場合で、痛みも一緒にある場合は、整形外科での相談をおすすめしています。

「なぜだめなのか」「危険性」への答え

ここからは、危険の側の話です。当店にとって不利な数字も出します。

 

2017年5月26日に、消費者庁が注意喚起を公表しています。法的な資格制度がない手技による施術について、事故の情報をまとめたものです。

 

当店のようなリラクゼーションサロンの施術も、この注意喚起が対象とする手技に含まれます(注意喚起での分類名は「リラクゼーションマッサージ」です)。含まれる側として、内容をそのまま書きます。

 

2009年9月1日から2017年3月末までに登録された、生命や身体への危害の情報が1,483件。そのうち治療期間が1か月以上となる事故が240件で、全体の約16パーセントです。この件数には、事実関係や因果関係が確認されていない事例も含まれると注記されています。

 

症状の内訳では、神経や脊髄の損傷が290件で最も多くなっています。次に擦過傷、挫傷、打撲傷が229件、骨折が122件、筋や腱の損傷が110件と続きます。

肩と首の施術による事例が、公表されています

注意喚起には、具体的な事例が13件載っています。そのうち肩や首に関わるものを挙げます。

 

どの業態か 公表されている事例 どうなったか
整体 肩こりで施術を受け、頭をつかまれて引っ張られた 激痛と手のしびれが出て、末しょう神経障害などと診断され、数か月たっても痛みが残った
カイロプラクティック 首をねじられて痛みを申し出たが、痛い方が効き目があると言われて続けられた 翌日から首が強く痛み、けい椎が損傷していると言われ、痛みが5か月以上続いた
整体院 肩の施術を頼んだのに胸部を施術された ろっ骨を骨折し、1か月たっても痛みが残った
格安マッサージ 首と肩の施術を受けた 翌日におう吐と激痛が出て、髄液が漏れていることが判明し、11日間入院した

 

 

4件のうち3件は整体とカイロプラクティックの事例で、1件は「格安マッサージ」の事例です。並べるのは、操作の内容が共通するからです。肩甲骨のまわりは首に近く、神経と血管が集まる場所に隣り合っています。

 

公表資料には、整体とカイロプラクティックで治療期間が1か月以上となる事故の割合が高い、とも書かれています。手技の内容別では、注意喚起での分類名「リラクゼーションマッサージ」の事故が251件で、そのうち治療期間が1か月以上のものが36件です。

 

「はがす」という言葉を信じて強く引く操作が、この近くで行われることの危うさは、こうした事例から読み取れます。

骨の強さが落ちている場合は、とくに慎重に扱います

注意喚起では、疾病がある方は施術の前に医師に相談するよう呼びかけられています。例として、心疾患、けい椎脊索狭さく症、骨粗しょう症が挙げられています。

 

骨折が122件含まれていることを踏まえ、当店では骨の強さに不安のある方に、圧の強さと施術の部位を調整しています。肩甲骨のまわりは肋骨の上にあたるため、とくに注意している場所です。

 

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国の通知が定めていること

手技による施術については、国の通知があります。1991年6月28日の医事第58号、厚生省(現・厚生労働省)が出した通知です。

 

消費者庁の注意喚起の中で、その内容が紹介されています。あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復以外の手技について書かれたものです。医学的な観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば、禁止や処罰の対象にするとされています。

 

いわゆるカイロプラクティック療法については、次のような取り扱いが定められています。禁忌対象疾患の認識、一部の危険な手技の禁止、適切な医療受療の遅延防止などです。当店はカイロプラクティックを行っておりませんが、同じ扱いを自店にも当てています。

 

危険な手技として通知が名指ししているのは、カイロプラクティック療法の中で、頸椎に急激な回転伸展操作を加える「スラスト法」です。

 

このうち「一部の危険な手技の禁止」が、この記事に直接関わります。危険な手技として扱われるものがある以上、どの操作を行わないかを自分で決めておくことが、施術する側の責任になります。以下の表は、これを踏まえて当店が決めたものです。

 

当店が行わない操作 理由
骨を鳴らすことを目的とした急な操作 鳴らすことで状態が良くなる根拠を持っていない。通知も、首への急な回転伸展操作(スラスト法)を危険な手技として名指ししている
指を差し込んで引き剥がすように引く 肩甲骨のまわりに神経と血管が集まっており、引く強さを管理できない
痛みを我慢していただく 痛みを申し出たのに続けられた事例が公表されている

 

 

この3つは、どのコースでも行いません。

当店が「肩甲骨はがし」をメニュー名に使っていない理由

当店はメニュー名にこの言葉を使っておりません。理由を3つ書きます。

 

1つ目は、骨が剥がれるという事実がないことです。言葉と実際の操作が、合っていないからです。

 

2つ目は、定義がないため、お客様の期待と当店の操作がずれることです。強く引き剥がす施術を期待してお越しになった方に、当店の操作は物足りなく感じられるはずです。

 

3つ目は、効果を約束する言葉として受け取られやすいことです。研究を当たった結果として、約束できる材料は見つかりませんでした。

 

かわりに当店が書いているのは、どの部位にどう触れるか、どの操作を行わないか、という内容です。この記事もその形になっています。

当店でしていること、していないこと

では、肩甲骨のまわりの張りに対して、当店が何をしているのかを書きます。

していること

タイ古式マッサージは、服を着たまま、受け手が脱力した状態で受ける形をとります。肩甲骨のまわりは、ご自分で伸ばそうとすると支える側に力が入り、緩みきらない場所です。他の人に委ねることで、力を抜いたまま動かしてもらえます。

 

腕の重さを預けていただいた状態で、肩甲骨を、動く範囲の中でゆっくり動かしていきます。勢いをつけずに行います。

 

背中側だけでなく、胸の前側と脇にも触れることが多いです。張りを感じる場所と、動きを妨げている場所が別のことがあるためです。

 

バリニーズアロマをお選びの場合は、オイルを使って面で触れていきます。点で押し込む形にはなりません。

していないこと

骨を鳴らすことを目的とした急な操作や、指を差し込んで引き剥がすような操作は行いません。痛みを我慢していただくこともありません。

 

そして「肩こりが治ります」「姿勢が矯正されます」という言い方をしておりません。当店の施術はリラクゼーションを目的としたものです。

施術の前に確かめていること

肩甲骨のまわりに触れる前に、当店が伺っていることを挙げます。

 

伺うこと なぜ伺うか
腕や指先のしびれ、冷たい感じ、力の入りにくさ 首や肩の近くには神経と血管が集まっており、症状があれば受診を先にお願いしている
通院中の病気と、飲んでいる薬 疾病がある方は施術の前に医師に相談するよう、公表資料で呼びかけられている
骨の強さについて言われたこと 肩甲骨のまわりは肋骨の上にあたるため、圧の強さを変えている
肩が上がらない時期があるか 炎症が強い時期に動かす範囲を広げようとすると、負担になりうる
痛みが出る動きと、出ない動き 施術の中で、その動きを避けるため

 

 

この5つのうち1つ目に当たる場合は、ご予約よりも受診を先にお願いしています。腕のしびれは、肩のこりとは別の扱いにしています。

うつ伏せがつらい方へ

肩甲骨のまわりに触れるとき、うつ伏せの姿勢が基本になると思われがちです。当店では、横向きや座った姿勢でもお受けいただけます。

 

首を横に向け続けることがつらい方、胸や腰に負担を感じる方は、ご予約のときにお伝えください。姿勢を変えて組み立てます。

 

あわせて読みたい:【施術 姿勢】マッサージでうつ伏せが辛い?あなたに合った「負担ゼロ」の受け方

ご自分でできること

研究で良い結果が出た条件に、自分で動かす訓練が含まれていました。ですので、ここは省かずに書きます。

 

ここからは、原典にもとづく話ではなく、当店がお伝えしている工夫です。必要なのは、簡単な動きだけになります。肩をすくめて下ろす、肩甲骨を軽く寄せて離す。この2つを1時間に一度ずつ、というのが当店でお伝えしている目安です。根拠のある目安ではありません。

 

方向を増やすよりも、毎日続けられる量に絞るほうが現実的です。痛みが出ない範囲にとどめてください。

座っている時間の組み立て

動かす回数を増やすよりも、同じ姿勢を続ける時間を切るほうが、実際には効きやすいところです。

 

画面の高さを目の高さに近づけると、頭を前に出す角度が浅くなります。机の上に本を重ねてノート型の機械を乗せるだけでも変わります。

 

肘を置ける高さに肘掛けを合わせると、腕の重さを肩で支え続ける時間が減ります。腕の重さを下から支えてもらうだけで、肩のまわりの仕事が減ります。

 

荷物を持つ側も、気づいたときに替えてみてください。片側だけで持ち続けると、支える側の肩が上がった姿勢で固まります。

やらないほうがよいこと

やらないほうがよいことを、理由と根拠の種類を添えて表にまとめます。

 

やらないほうがよいこと 理由 根拠の種類
音を鳴らすことを目的にする 鳴らすことで状態が良くなる根拠がない 当店の方針
痛みを我慢して伸ばす 痛みを申し出たのに続けられ、数か月痛みが残った事例がある 消費者庁の公表資料
腕や指先のしびれが出たまま続ける 施術後の異常はいったん中止して医師に相談するよう呼びかけられている 消費者庁の公表資料
通院中なのに、相談せずに受ける 疾病がある方は施術の前に医師に相談するよう呼びかけられている 消費者庁の公表資料

 

 

腕や指先のしびれ、冷たい感じ、力の入りにくさが出た場合は、次のご予約よりも先に受診をお願いしています。これは当店の方針です。

よくあるご質問

ラダシアに肩甲骨はがしのメニューはありますか?

その名前のメニューはご用意しておりません。肩甲骨のまわりを動かす手順は、タイ古式マッサージの中に含まれています。

肩甲骨はがしは、1回でも変わりますか?

1回で軽く感じられる方はおられます。公表された試験でも、1回目のあとの時点で差が出た報告があります。ただし、それは理学療法に足した1回で、観察も1週間のうちの話です。

肩甲骨を動かすストレッチは、毎日やってもよいですか?

ご自分で肩を動かす範囲であれば、痛みの出ない量で毎日行っていただいてかまいません。施術の頻度については、根拠のある目安を当店は持っておりません。

肩甲骨に指が入らないのは、はがれていないということですか?

指が入る深さは、体格や筋肉の付き方によって違います。入らないことが異常という扱いにはなりません。入るまで押し込む施術を、当店は行いません。

肩甲骨のまわりは、強く押してもらったほうが効きますか?

強さと効果が比例するという根拠を、当店は持っておりません。痛みを感じる強さまで上げると、体が防ごうとして力が入ります。心地よい範囲でお受けいただく形をおすすめしています。

肩甲骨のまわりをゆるめたい場合、タイ古式マッサージとバリニーズアロマのどちらを選べばよいですか?

肩甲骨のまわりを動かす手順が多いのは、タイ古式マッサージです。服を着たまま、腕や肩を動かしながら進みます。

 

バリニーズアロマは、オイルを使って面で触れていく形です。動かす手順は少なめで、触れている時間が長くなります。

 

どちらが効くかを比べた材料を、当店は持っておりません。動かされる感覚が心地よい方はタイ古式マッサージ。静かに触れられるほうが落ち着く方はバリニーズアロマ。この選び方をご案内しています。

肩甲骨はがしは、整骨院で受けるものと何が違うのですか?

当店は、法的な資格制度がない手技による施術を行うサロンです。柔道整復師が行う施術とは、制度の区分が違います。治療を目的とした施術は行っておりません。

肩甲骨の動きが悪いと言われましたが、マッサージを受けてよいですか?

医療機関や接骨院でそう言われている場合は、受けてよいかを先にご確認ください。確認が取れていれば、動く範囲の中で緩める時間としてご利用いただけます。

肩甲骨のまわりの施術を受けた翌日に痛みが出たときは、どうすればよいですか?

当店へご連絡いただいたうえで、医療機関にご相談ください。好転反応という説明はいたしません。消費者庁も、異常を感じたときは施術をいったん中止して医師に相談するよう呼びかけています。

まとめ

肩甲骨はがしという言葉は、医学の定義の外にあります。同じ名前で呼ばれる手技の中身にも、大きな幅があります。

 

五十肩を対象にしたまとめの研究では、肩甲骨を動かす手技について、4つの項目すべてで意味のある差が出ませんでした。集まった無作為化試験は6本です。

 

一方で、首の痛みを対象にした試験では差が出ています。46名を対象に1週間で5回行った試験と、30名を3群に分けて6週間行った報告です。後者で足されていたのは、首と胸の背骨を自分で動かす訓練でした。

 

差が出た2本はどちらも、理学療法や運動に足した形でした。このうち2024年の報告では、足されていたのが施術ではなく、自分で動かす訓練でした。

 

ですので「意味がない」という指摘は、これだけで十分とは言えないという意味であれば、言い過ぎではありません。当店としては、そこを認めたうえでお伝えします。

 

期間の目安については、示せる根拠が見つかりませんでした。観察されたのは1週間と6週間の時点で、その先は分かっていません。

 

危険の側の数字も、限定つきで置いておきます。法的な資格制度がない施術について、2009年9月から2017年3月末までに登録された危害の情報が1,483件。因果関係が確認されていない事例も含むと注記されています。いちばん多い症状は神経や脊髄の損傷で290件です。

 

当店が骨を鳴らすことを目的とした急な操作や、引き剥がすように引く操作を行わないのは、この数字と事例を踏まえた方針です。

 

そして、効果という言葉が何を指しているのかにも気をつけてください。研究で測られているのは、動く範囲の角度や、痛みの点数や、握る力です。受けたあとの軽い感じは、そのどれとも別のところにあります。

 

できることは、力を抜いたまま、肩甲骨を動く範囲の中でゆっくり動かす時間をつくること。そして、ご自分で動かす形を一緒に決めることです。肩のまわりの重さが毎日の標準になっているなら、一度そこから離れる時間を取ってみてください。

 

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タイ古式マッサージとバリニーズアロマの2つに専門特化し、全店舗を完全個室でご用意しています。セラピストは15日間の研修と卒業試験を経て現場に立っていますので、初めての方もご安心ください。

 

※当店の施術はリラクゼーションを目的としたものであり、医療行為ではありません。疾病の治療や症状の改善を目的とするものではなく、診断や治療は行っておりません。肩や首の痛みが続く場合、腕や指先のしびれがある場合、腕に力が入りにくい場合は、整形外科などの医療機関にご相談ください。

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