タイ古式マッサージ

寝ているのに疲れが取れないのはなぜ?「睡眠休養感」という国の指標から考える

7時間寝ている。夜中に起きることもない。それでも朝、体が重い。

 

この状態でご相談に来られる方は少なくありません。困るのは、周りに話しても「もっと寝れば」で終わってしまうことです。眠れているのだから、時間の問題ではない。ご本人がいちばんよく分かっています。

 

実は、この感覚には国の指標に名前がついています。睡眠休養感といいます。2024年に厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」があります。ここで、睡眠の質を表す指標として正面から扱われるようになりました。

 

この記事では、まずそのガイドを原典から読み解きます。どれくらい眠れば足りるとされているのか、休めた感覚を高めるために何が挙げられているのか。そのうえで、体から見た「休めていない」状態を整理します。さらに、ご自分で確かめる手順と、マッサージについて研究が言えていること・言えていないことをお伝えします。長い記事になりますが、順番に読めるように並べました。

眠っている時間と、休めた感覚は別のもの

睡眠ガイドの中で、いちばん大事な考え方がここです。

 

ガイドは、睡眠の良さを2つに分けています。ひとつは量、つまり睡眠時間。もうひとつが質で、これを表す指標が睡眠休養感です。原文では「睡眠時間が睡眠の量を反映する指標であるとすれば、睡眠休養感は睡眠の質を反映する指標といえます」と書かれています。

 

そして、良い睡眠は量と質の両方がそろって初めて担保されるとされています。時間だけ確保しても、休めた感覚が伴っていなければ、片方しか満たしていないことになります。

 

「寝ているのに疲れが取れない」という状態は、まさに片方だけが満たされた状態です。気のせいでも、わがままでもありません。国のガイドが指標として扱っているものが、下がっている状態です。

休養感が下がったままだと、何につながるのか

ガイドが睡眠を「健康増進・維持に不可欠な休養活動」と位置づけているのは、影響が広いからです。原典には、睡眠の問題が慢性化した場合に関わるものとして、次のような内容が挙げられています。

 

 

  • 日中の眠気や疲労、頭痛などの心身の訴えの増加
  • 注意力や判断力の低下による、作業や学業の効率の低下
  • 事故につながる場合があること
  • 肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管の病気の発症リスクや症状の悪化との関連
  • 気分の落ち込みを伴う状態が、睡眠の問題とお互いに影響し合うこと

 

 

怖がらせたくて書いているのではありません。「疲れが取れないくらい、たいしたことではない」と自分で値引きしてしまう方が多くおられます。ですので、国がここまで書いているという事実をお伝えしたいのです。

 

眠りの不調は、我慢の対象ではなく、手を入れる対象として扱われています。相談していい話だ、ということです。

どれくらい眠れば足りるのか

ガイドは年代別に推奨を示しています。原典から整理します。

 

 

年代 推奨されている内容
成人 適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する
成人 食生活や運動などの生活習慣、寝室の環境を見直して、睡眠休養感を高める
成人 睡眠の不調や睡眠休養感の低下があるときは、生活習慣の改善が重要だが、病気が潜んでいる可能性にも留意する
高齢者 長い床上時間は健康リスクとなるため、床の上で過ごす時間が8時間以上にならないことを目安にする
小学生 9時間から12時間を参考に睡眠時間を確保する
中学生・高校生 8時間から10時間を参考に睡眠時間を確保する

 

※高齢者の欄だけ「寝床で過ごす時間」の上限で、ほかの欄は「眠っている時間」です。同じ8時間という数字が別の意味で出てくるので、ここは分けて読んでください。

 

 

注目していただきたいのは3つです。

 

ひとつ目は、成人の推奨が「8時間」ではなく「6時間以上を目安」であること。そして「適正な睡眠時間には個人差がある」と最初に書かれています。8時間眠らなければいけない、という前提から降りていい、ということです。

 

2つ目は、高齢者について長く寝床にいることがリスクとして扱われていること。眠れないからと早くから布団に入り、朝も長く横になっている。この形は、ガイドの考え方とは逆を向いています。

 

3つ目は、成人の推奨の3番目に「病気が潜んでいる可能性にも留意する」とはっきり書かれていることです。生活習慣を見直しても休養感が戻らないときは、そこで止まらないでほしい、という趣旨です。この記事の後半で、その中身に触れます。

日本人の睡眠時間は、そもそも足りていない

ガイドが引いている国の調査(令和元年の国民健康・栄養調査)があります。1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は、男性37.5パーセント、女性40.6パーセントです。年代で見ると、男性の30代から50代、女性の40代から50代では、4割以上を占めています。

 

働く世代の4割前後が、ガイドの目安である6時間を下回っている計算になります。

 

この数字を出したのは、「だから寝ましょう」と言うためではありません。時間が足りていない方と、時間は足りているのに休めていない方は、打ち手が違うからです。まずご自分がどちらなのかを分けてください。

 

時間が6時間を下回っているなら、休養感の話より先に、寝る時間の確保が要ります。逆に、6時間以上眠っていて休めていないのであれば、この先の話が当てはまります。

眠れているのに回復しない、と感じる背景

ここからは、休養感が下がる背景を見ていきます。順番には意味があります。先に「当てはまったらそこで止まってほしいもの」から書きます。

当てはまる方は、ここで止まってください

ガイドが「病気が潜んでいる可能性にも留意する」と書いているとおり、ここを先に確かめます。ガイドが、休めた感覚が下がることに関わるものとして挙げているのは、次のような状態です。

 

 

  • 睡眠中に呼吸が止まる状態(睡眠時無呼吸と呼ばれます)
  • 脚の不快感で眠れない状態(むずむず脚症候群と呼ばれます)
  • 眠っている間に脚が繰り返し動く状態(周期性四肢運動障害と呼ばれます)
  • 気分の落ち込みを伴う状態

 

 

ガイドには出てきませんが、甲状腺の働きの低下や貧血も、一般に、疲れやすさやだるさの背景になることがあるとされています。

 

どれも、生活習慣の工夫やマッサージで扱える範囲の外にあります。どういうときに受診するかは、この記事の後半「受診を優先していただきたい場合」にまとめました。その節の項目に1つでも当てはまる方は、この記事の残りを読むより先に、内科か睡眠の専門外来にご相談ください。

 

当てはまらない方は、このまま読み進めてください。ただし、睡眠中の呼吸が止まる状態は、本人の感覚だけでは気づきにくいものです。ご家族から、いびきが止まって大きく息をしていると言われたことがないかも、思い出してみてください。

寝床にいる時間が、睡眠時間より長すぎる

これは、とくに年齢が上がった方に多い形です。

 

眠れないから早めに布団に入る。朝も目は覚めているけれど、まだ横になっている。合計すると9時間、10時間を寝床で過ごしている。ところが眠れている時間は6時間程度で、残りは「眠れずに横になっている時間」です。

 

ガイドが高齢者について「床の上で過ごす時間が8時間以上にならないことを目安に」としているのは、この状態を避けるためです。高齢者については、寝床にいる時間が長くなるほど眠りが途切れやすくなるとされています。

 

眠れないまま布団の中で時間を過ごすより、いったん起きて別の部屋で過ごし、眠気が来てから戻る。これは、この記事の後半で触れる不眠への治療的な取り組みでも使われている考え方です。

体がこわばったまま、横になっている

ここからは、体の側の話です。研究で確かめきれている部分は少なく、当店の実感を含みます。その前提でお読みください。

 

施術で体に触れると、眠りの訴えがある方の多くが、背中と首の後ろ、そして股関節の前側が硬くなっています。日中の姿勢がそのまま残っている状態です。

 

この状態で横になると、体は「休む形」を取りきれません。仰向けになっても腰が浮く、肩が床につかない、脚を伸ばすとつっぱる。そうなると、寝ているあいだも体のどこかが働き続けることになります。

 

「朝、決まった側の肩が痛い」「起きたときがいちばん腰が硬い」という訴えは、この形で説明がつく場合があります。ただし、こわばりが原因で休養感が下がるのか、休めていないから体がこわばるのかは、施術する側から言い切れません。

どこが硬いと、横になりにくいのか

もう少し具体的に書きます。当店で触れていて、眠りの訴えと一緒に出てくることが多い場所です。

 

 

硬くなりやすい場所 横になったときに起きること
背中の上のほう(肩甲骨のあいだ) 仰向けで肩が床につかず、胸が広がりにくい
首の後ろから後頭部 枕の高さが合わなくなる。あごが上がりやすい
股関節の前側 脚を伸ばすと腰が浮く。膝を曲げたほうが楽になる
ふくらはぎと足首 脚の重さが残り、寝つく前に脚を動かしたくなる

 

 

仰向けで腰が浮く方は、膝の下にクッションを入れてみてください。それだけで腰の反りがゆるみ、体が床に預けられるようになる方がいます。横向きで寝る方は、抱き枕のようなものを使って、上側の脚を支えると股関節が楽になります。

 

これらは、道具で形を作っているだけです。硬さそのものは残っています。ただ、その日の眠りを楽にする工夫としては現実的です。

呼吸が浅いまま眠っている

もうひとつ、現場でよく感じるのが呼吸です。

 

仰向けになっていただくと、胸だけが小さく上下している方がいます。肋骨のあいだや、背中の上のほうが硬くなっていると、息を吸ったときに胸が広がりにくくなります。

 

ゆっくりした呼吸が、体を休む側へ切り替える働きと関わっていることは、生理学の分野で以前から知られています。ただ、「呼吸が浅いから休養感が下がる」という順番を人の体で確かめた研究は見当たりません。当店がお伝えしているのは、施術のあとに「息が入りやすくなった」とおっしゃる方が多い、という範囲までです。

嗜好品との付き合い方は、ガイドがはっきり書いている

生活習慣の中で、ガイドがとくに具体的に書いているのがここです。原典の記述をそのままお伝えします。

カフェイン

推奨事項として、次の2点が挙げられています。

 

 

  • 1日の摂取量が400ミリグラム(コーヒーで700ミリリットル程度)を超えると、夜眠りにくくなる可能性がある
  • 夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすい

 

 

700ミリリットルというと、マグカップで3杯ほどです。意外に多いと感じる方もいれば、超えていたと気づく方もいるはずです。

 

そして、カフェインの分解にかかる時間には個人差があります。同じ量を飲んでも、影響の残り方は人によって違います。「自分は寝る前に飲んでも眠れる」という方がいるのは事実ですが、それを他の人に当てはめることはできません。

 

眠気覚ましにカフェインを使っている方は、順番が逆になっていないか確かめてください。日中の眠気の背景に睡眠不足があり、それをカフェインで抑え、そのカフェインが夜の眠りを妨げる。この輪をどこかで切る必要があります。

お酒

こちらも、ガイドの記述はかなり明確です。

 

お酒は、体内で分解される過程で二日酔いの原因になる物質に変わります。この物質には交感神経を強く刺激する働きがあり、睡眠を妨げる方向に働きます。夜中に目が覚める回数が増えることも報告されています。

 

さらに、お酒は睡眠中の呼吸が止まる状態を悪化させます。そしてお酒には慣れが生じるため、飲まないと眠れない状態に進むことがあります。

 

ガイドは、寝つきをよくするための飲酒(いわゆる寝酒)を含めて、大量の飲酒や毎日の飲酒は推奨しないとしています。寝酒が必要になっている場合は、その背景にある眠れなさのほうを医師に相談することが推奨されています。

 

当店でも、「寝る前に飲まないと眠れない」とおっしゃる方には、一度ご相談をおすすめしています。施術で置き換えられる話ではありません。

寝室の環境と、朝の光

ガイドは、成人の推奨事項に「寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める」を挙げています。環境として名前が出ているのは、光・温度・音です。

 

 

要素 見直すところ
光 就寝前の強い光を避ける。朝は太陽の光を浴びる。遮光とのバランスを取る
温度 暑すぎ、寒すぎを避ける。秋から冬は、明け方の冷え込みに合わせて寝具を足す
音 気になる音を減らす。完全な無音でなくてよい方もいる
寝具 体が沈みすぎない硬さ。枕の高さが首の形に合っているか

 

 

ガイドには、こどもの推奨事項があります。「朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける」というものです。大人について同じ推奨が示されているわけではありませんが、朝の光が体のリズムに関わることは広く知られています。秋から冬は日の出が遅くなるので、起きてすぐカーテンを開ける習慣を試してみてください。

 

運動については、ガイドは日中の運動を勧めるいっぽうで、寝る直前の激しい運動は睡眠の質を下げる可能性があると書いています。夜遅くにジムへ行く方は、内容を軽めにする日をつくってみてください。

「寝だめ」で戻るのか

週末に長く寝て取り返す、という方法について。

 

結論として、当店は「足りない分を後から埋める」という考え方をおすすめしていません。平日の睡眠時間が足りていない方が週末に長く眠ると、確かに楽になった感覚はあります。ただ、寝る時刻と起きる時刻が週末だけ大きくずれると、月曜の朝がつらくなる方が多いです。

 

この話は以前の記事で詳しく扱いました。ここでお伝えしたいのは、休養感は「まとめて取る」より「毎日そこそこ確保する」ほうが保ちやすいということです。

 

あわせて読みたい:【睡眠不足解消】「寝だめ」よりスッキリ?深い休息へ誘う「究極の寝落ち」とタイ古式リラクゼーションの科学

日中の眠気は、別の信号として扱う

「寝ても疲れが取れない」と「日中に眠くなる」は、分けて考えてください。

 

夜の睡眠が足りていない、あるいは質が下がっていれば、日中に眠気が出るのは自然なことです。ただ、座っているだけで眠ってしまう、会話の途中で意識が飛ぶ、運転中に危ないと感じた。このレベルの眠気は、生活の工夫で解決する範囲を超えています。

 

ガイドも、カフェインで眠気を抑えている人に向けて、それでも日中の眠気が改善しない場合は医師に相談するよう書いています。

 

また、睡眠中の呼吸が止まる状態がある方は、自分の睡眠を実際より長く評価することがあると指摘されています。「十分眠っているつもりなのに回復しない」という感覚が、この状態と重なることもあるということです。ここは、本人の感覚だけでは判断できません。

交代勤務や、不規則な時間で働いている方へ

夜勤がある方、時間帯が週ごとに変わる方から、「自分の場合はどうしようもないのでは」と言われることがあります。

 

確かに、寝る時刻を一定にするという方法は使えません。ガイドも就業形態と睡眠の課題を別の章で扱っており、簡単な話ではないという前提に立っています。

 

そのうえで、当店にできる範囲でお伝えしていることがあります。

 

 

  • 眠る時刻を一定にできない代わりに、眠る前の手順を一定にする。お風呂に入る、照明を落とす、体を伸ばす。この順番が合図として働くことがあります
  • 勤務明けの仮眠は、寝床にいる時間を伸ばしすぎない。当店で伺っているかぎり、長く横になった日のほうが夜につながりにくいようです
  • 予約の時間帯を、勤務の周期に合わせる。当店は夜のご予約もお受けしています。勤務明けにお越しになる方もいらっしゃいます

 

 

どれも研究で確かめられた方法ではなく、当店で伺っている範囲の工夫です。そのうえで、勤務の形そのものが睡眠に影響していると感じておられるなら、産業医や主治医にご相談ください。

マッサージは、睡眠に効くのか

ここが、お客様からいちばん多くいただく質問です。研究を両方お見せします。

効果が報告されている側

眠りの訴えに対する手技の効果を調べた研究は、いくつも行われています。複数の方法を比べた分析で、マッサージが上位に来たという報告もあります。

 

ただし、ここは注意が必要です。その分析の対象は、パーキンソン病の方や、がんに関連した不眠のある方でした。特定の病気を抱えた方を対象にした結果を、健康な方の「寝ても疲れが取れない」にそのまま当てはめることはできません。

 

この点を伏せて「マッサージが最も効果的」と書くことはできますが、それは正確ではありません。

確実性が低いとされている側

いっぽうで、複数の研究を厳密にまとめた評価もあります。手技が睡眠に与える効果について「確実性は非常に低い」と結論づけられています。研究の数が少なく、質もばらついているため、効果があるとも言えないし、ないとも言えない、という状態です。

 

「確実性が低い」は、「効かない」とは違います。まだ確かめられていない、という意味です。そして、確かめられていないものを「効きます」と言うことはできません。

ここから言えること

当店が申し上げられるのは、次の範囲です。

 

 

  • マッサージで睡眠が改善する、とはお伝えできません。研究の確実性が低いためです
  • 施術中に眠ってしまっても構いません。終わりの時間にはお声がけいたします
  • 睡眠時間そのものが足りていない場合は、施術より先に時間の確保が要ります

 

 

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「寝ても疲れが取れない」と検索した方が、よく見る話

この言葉で調べると、いくつかの説明によく出会います。そのうち、確かめられている度合いがはっきり違うものを並べておきます。

 

 

よく見る説明 確かめられている度合い
睡眠時間が足りていない 国の調査で、働く世代の4割前後が6時間未満。まず確かめる価値がある
寝床にいる時間が長すぎる ガイドが高齢者について目安を示している
病気が隠れている ガイドが推奨事項に明記している
カフェインやお酒の影響 ガイドが量と時刻の目安を示している
90分の倍数で起きるとよい ガイドには出てこない
入浴で体温を上げてから下げると眠りやすくなる 考え方は生理学の枠組みに沿うが、「何分前に何度で何分」という数字はガイドには出てこない
マッサージで睡眠の質が上がる 研究の確実性が低い(この記事の「マッサージは、睡眠に効くのか」で詳しく)

 

 

下の3つは、よく見かけるのに根拠が弱い側です。いちばん下が当店の領域ですから、ここを都合よく書かないことが、この記事を出す意味だと考えています。

 

入浴については、ご自分が楽な形で構いません。数字にこだわるより、湯冷めしないうちに布団へ入れるかどうかのほうが実用的です。

触れられることと、休む側への切り替え

ゆっくりした優しい接触に反応する感覚の経路については、神経科学の分野で研究が進んでいます。

 

皮膚には、ゆっくりとした優しい接触に反応する感覚の経路があることが分かっています。強く押される刺激とは別の経路で、心地よさとして受け取られる種類の触覚です。

 

ここまでは確かめられている話です。いっぽうで、それが睡眠の質をどれだけ変えるのかは、まだ数字で示せる段階にありません。「触れられると眠くなる」という体験は多くの方が持っていますが、体験の説明がついたことと、効果が測られたことは別です。

1週間、記録をつけてみる

ここまで読んで「自分がどれに当てはまるのか分からない」と感じた方は、記録から始めるのが早道です。

 

書くのは4つだけで構いません。

 

 

書くこと なぜ書くのか
布団に入った時刻と起きた時刻、そのうち眠っていたと思う時間 寝床にいる時間と、眠っていた時間の差が見える
朝起きたときの休めた感じ(5段階でも、よい・ふつう・悪いの3段階でも) これが睡眠休養感です。日ごとの上下が見える
その日のカフェインと、お酒の量と時刻 翌朝の休養感との関係が見える
日中の眠気の強さ 夜の記録とつなげて読める

 

 

1週間で、いくつか分かることがあります。寝床にいる時間が、眠っていた時間よりかなり長いのに休養感が低いなら、寝床の時間を削るほうへ向かいます。夕方のコーヒーを飲んだ日だけ休養感が低いなら、そこを変えられます。どの日も同じように低いなら、生活の工夫では届かない部分がある可能性が出てきます。

 

そして、この記録は医療機関に相談するときにそのまま使えます。「なんとなく疲れが取れません」と伝えるより、1週間分の記録を見せたほうが、話が早く進みます。

昼寝は、していいのか

昼寝についてよく聞かれます。

 

短い昼寝が午後の眠気を減らすことは、一般に受け入れられている考え方です。いっぽうで、長く寝すぎると夜の寝つきが悪くなる方がいます。当店でお伝えしているのは、次の2点だけです。

 

 

  • 夕方以降の仮眠は避ける。夜の眠気を先に使ってしまいます
  • 寝床ではなく、椅子やソファで取る。寝床に長くいる時間を増やさないためです

 

 

ここは、ご自分の翌朝の休養感で判断していただくのがいちばん確かです。昼寝をした日としなかった日で、記録を比べてみてください。

秋から冬にかけて、眠りが変わる方へ

この時期に眠りの相談が増えるのには、いくつか理由があります。

 

まず、日の出が遅くなります。朝の光は体のリズムに関わるので、暗いうちに起きる生活が続くと、起きても体が動き出しにくくなります。

 

次に、気温の下がり方です。気象庁の平年値で東京の月の平均気温を見ると、9月23.3度、10月18.0度、11月12.5度と、月ごとに5度以上ずつ下がっていきます。月の平均でこれだけ下がるので、同じ寝具のままでは、明け方に足りなくなることがあります。そこで体が冷えると、目が覚めたり、体がこわばったりします。

 

対策としては、朝起きたらすぐカーテンを開けることと、明け方のために寝具を一枚足しておくことです。掛け布団を足すより、足元に薄手のものを置くほうが、暑くなりすぎず調整しやすいという方が多いです。

 

この時期に「寝ても疲れが取れない」が強くなった方は、季節の変化が重なっている可能性があります。

今夜からできること

ガイドの推奨と、当店でお伝えしている内容を合わせて整理します。

 

 

いつ すること 根拠
まず一度 自分の睡眠時間を数えてみる。6時間を下回っていないか ガイドの成人の目安は6時間以上
寝床に入る前 眠くなってから布団に入る。眠れないまま横になり続けない 寝床で過ごす時間が長いことは、リスクとして扱われている
寝る前 背中と股関節の前側を、軽く伸ばしておく 当店の実感。研究で確かめられた話ではありません
寝室 光と音と温度を見直す ガイドが「寝室の睡眠環境を見直す」を推奨に挙げている
朝 起きる時刻を、休日もあまりずらさない ずれが大きいと月曜がつらくなる方が多い
変わらないとき 内科か睡眠の専門外来に相談する ガイドが「病気が潜んでいる可能性にも留意する」を推奨に挙げている

 

 

上から順に試していただくのがおすすめです。ただし、後の「受診を優先していただきたい場合」に1つでも当てはまる方は、この表の順番を待たずに受診してください。時間が足りていないのに寝室の環境を整えても、埋まらない部分が残ります。

ご家族の眠りが気になる方へ

ご自分ではなく、同居のご家族について相談されることもあります。ガイドは年代ごとに推奨を分けているので、その違いをお伝えしておきます。

 

高齢のご家族については、寝床で過ごす時間が長くなりすぎていないかを見てください。眠れないからと早く布団へ入り、朝も長く横になっている形は、ガイドの考え方とは逆を向いています。日中に体を動かす時間や、人と話す時間を持つことが、夜の眠りに関わるとされています。

 

お子さんについては、小学生で9時間から12時間、中学生・高校生で8時間から10時間が参考値です。ガイドはあわせて、次の内容を推奨に挙げています。「朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける」。

受診を優先していただきたい場合

次に当てはまる場合は、施術より先に医療機関にご相談ください。

 

 

  • いびきが止まって、しばらくして大きく息をすると指摘されたことがある
  • 日中に、座っているだけで眠ってしまうほどの眠気がある
  • 体重が意図せず減った、または増えた
  • 気分の落ち込みが続く、何をしても楽しめない、早朝に目が覚める
  • 強い動悸、息切れ、立ちくらみがある
  • 夕方から夜にかけて、脚の不快感でじっとしていられない
  • 生活を見直しても、数か月にわたって休養感が戻らない

 

 

これらは、サロンで扱える範囲を超えています。当店でも、施術前のお話でこうした内容を伺った場合は、受診をおすすめしています。

 

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眠れない夜そのものに、手を入れる方法もある

当店の領域の外の話ですが、知っておいていただきたいことがあります。

 

眠れない状態に対して、薬を使わずに、寝床との付き合い方や考え方を組み立て直していく方法が医療の中にあります。眠れないまま寝床で過ごす時間を短くしていく、眠りに関する思い込みを整理していく、といった手順を踏むものです。

 

この方法は、専門の医療機関やプログラムで扱われています。サロンで提供できるものではありません。ただ、「薬を飲むしかないのか」と迷っておられる方には、こういう選択肢もある、とお伝えしたいのです。

 

当店にできるのは、日中に固まった体を緩める時間をつくることです。眠れない夜そのものを扱う手段は持っていません。その線引きは、はっきりさせておきます。

どのくらいの間隔で受けるといいのか

眠りの訴えでお越しになる方から、通う間隔を聞かれます。

 

根拠のある目安は、研究からは出ていないのが実情です。

 

そのうえで、当店にお越しになっている方の実際をお伝えすると、2週間から3週間に1度という方が多いです。疲れがたまってきたと感じたら来る、という使い方をされている方もいます。

 

大事なのは、施術に来られない期間のほうが長いということです。施術は来店された日だけのことですが、この記事に書いた睡眠時間の確保、寝床にいる時間、カフェインとお酒の時刻は毎日のことです。しかもそれは当店の外で起きることです。

当店でしていること

眠りの訴えでいらっしゃった方に、当店でよく取っている進め方です。セラピストやその日のご希望によって変わり、ご希望に合わせて調整いたします。

 

 

  • 眠ってしまっても構いません、と最初にお伝えします。終わりの時間にはお声がけいたします。施術の内容を覚えている必要もありません
  • 照明を落として、会話は控えめにすることが多いです。話したいときだけお話しください
  • 圧は弱めから入ることが多いです。強い刺激だと力が入ってしまう方が多いためです
  • 背中と股関節の前側に時間をかけることが多いです。横になったときに体が休む形を取りやすくなるためです
  • 全店舗が完全個室です。眠ってしまうことを気にされる必要はありません
  • お子さまとご一緒のご来店はお受けできません。キッズスペースがなく、施術中にお預かりできないためです。預け先を確保できる日にご予約ください

 

 

タイ古式マッサージは、受け手が服を着たまま脱力して受ける形をとります。自分で力を抜こうとすると、抜こうとすること自体に力が入ってしまう方は多いです。

 

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よくあるご質問

睡眠休養感とは、どういう意味ですか?

眠ったあとに「休めた」と感じられる度合いのことで、国の睡眠ガイドが睡眠の質を表す指標として使っています。睡眠時間が量を表す指標であるとすれば、睡眠休養感は質を表す指標という位置づけです。良い睡眠は、量と質の両方がそろって成り立つとされています。「時間は足りているのに回復しない」という状態は、この質の側が下がっている状態にあたります。

寝ても疲れが取れないのは、何時間寝れば解決しますか?

時間だけでは解決しない場合があります。国のガイドは、成人について「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安に」としています。そのうえで、睡眠休養感(休めた感覚)を別の指標として置いています。まず6時間を下回っていないかを確かめます。足りているのに休めていないのであれば、寝室の環境や生活習慣、そして病気の可能性の順で見ていくことになります。本文の「受診を優先していただきたい場合」に当てはまる方は、この順番を待たずにご相談ください。

寝つきが悪いのと、寝ても疲れが取れないのは同じことですか?

別のことです。寝つくまでに時間がかかる、夜中に何度も目が覚める、といった訴えは、眠りに入る側や続ける側の問題です。いっぽう「寝ても疲れが取れない」は、眠れているのに休めた感覚が伴わない状態です。もちろん両方が重なることもあります。記録をつけると、自分がどちらに近いかが見えてきます。

マッサージを受けると、よく眠れるようになりますか?

なるとはお伝えできません。手技が睡眠に与える効果については、複数の研究をまとめた評価で「確実性は非常に低い」とされています。効果を示した分析もあります。ただし、その対象はパーキンソン病の方やがんに関連した不眠のある方で、健康な方に当てはめられるものではありません。当店で伺っている範囲では、施術のあと「よく眠れた」とおっしゃる方もいます。

寝ても疲れが取れないのは、病気の可能性がありますか?

あります。国のガイドも、成人の推奨事項に「病気が潜んでいる可能性にも留意する」と明記しています。ガイドが挙げているのは、睡眠中の呼吸が止まる状態や、脚の不快感で眠れない状態などです。ガイドには出てきませんが、甲状腺の働きの低下や貧血が、疲れやすさの背景になることもあります。本文の「受診を優先していただきたい場合」に当てはまる方は、一度内科か睡眠の専門外来でご相談ください。

8時間眠らないといけないと聞きましたが、本当ですか?

国のガイドは、成人について「6時間以上を目安」としており、「適正な睡眠時間には個人差がある」とも書かれています。8時間という数字が推奨されているわけではありません。なお高齢者について8時間という数字が出てきますが、これは眠る時間ではなく「寝床で過ごす時間」の上限です。

寝る前にマッサージを受けたほうが、眠りやすいですか?

夜の時間帯にお越しになる方は多く、「そのまま帰って寝られるのがいい」とおっしゃいます。ただ、どの時刻に受けるのがよいかを比べた研究は見当たりません。ご都合のよい時間で構いません。当店は夜のご予約もお受けしていますので、帰宅前に寄られる形もお選びいただけます。

施術中に寝てしまうのは、もったいないですか?

もったいなくありません。眠ってしまっても構いません。終わりの時間にはお声がけいたします。施術の内容を覚えていることが目的ではないからです。眠れる状態になったこと自体を、その日の成果と考えていただければと思います。

休日に寝だめをすれば、平日の睡眠不足は取り返せますか?

取り返せるとは言いにくいところです。長く眠った直後は楽になりますが、寝る時刻と起きる時刻が週末だけ大きくずれると、月曜の朝がつらくなる方が多いです。休養感は、まとめて取るよりも毎日そこそこ確保するほうが保ちやすいと考えています。

寝ても疲れが取れない状態が続いています。どのくらいで医療機関に相談すべきですか?

数か月にわたって続いているのであれば、一度ご相談ください。生活習慣を見直しても戻らない場合は、ガイドが挙げているとおり、病気の可能性を確かめる段階に入ります。本文の「受診を優先していただきたい場合」に1つでも当てはまるなら、期間を待たずに受診してください。

まとめ

眠っているのに疲れが取れない状態について、国のガイドを原典から読み解きました。

 

睡眠の良さは、量(時間)と質(睡眠休養感)の両方でできています。時間は足りているのに休めていない、という状態は、片方だけが満たされた状態です。気のせいではなく、指標として扱われているものが下がっています。

 

成人の目安は6時間以上で、8時間ではありません。個人差があることも最初に書かれています。高齢者については、寝床で過ごす時間が8時間以上にならないことが目安とされています。そして働く世代では、4割前後が6時間を下回っています。

 

順番としては、まず睡眠時間を数える。足りていなければ時間の確保が先です。足りているのに休めていないなら、寝床にいる時間、寝室の環境、体のこわばりを見ていく。それでも戻らないときは、ガイドが書いているとおり病気の可能性を確かめる段階です。「受診を優先していただきたい場合」に1つでも当てはまるなら、順番を待たずに受診してください。

 

マッサージについては、正直にお伝えします。睡眠への効果は「確実性が非常に低い」と評価されている段階です。効果を示した分析は、特定の病気を抱えた方を対象にしたものでした。当店から、睡眠への効果をお約束することはできません。

 

そのうえで、力を抜く時間を確保することには意味があると、当店では考えています。眠りが変わるとお約束はできませんが、自分では抜けない力が抜ける時間をつくることはできます。上の順番で見直しても体のこわばりが残るなら、一度、力を抜くだけの時間を取ってみてください。

 

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タイ古式マッサージとバリニーズアロマの2つに専門特化し、全店舗を完全個室でご用意しています。セラピストは15日間の研修と卒業試験を経て現場に立っていますので、初めての方もご安心ください。

 

※当店の施術はリラクゼーションを目的としたものであり、医療行為ではありません。疾病の治療や症状の改善を目的とするものではなく、診断や治療は行っておりません。眠りの不調が続く場合や気になる症状がある場合は、内科や睡眠の専門外来などの医療機関にご相談ください。

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