タイ古式マッサージ

久しぶりに運動して筋肉痛。もんでいいのか、いつがいいのかを研究から考える

何年かぶりに運動をして、翌々日に階段が降りられない。動かした場所を触ると痛い。この痛みを早く抜きたくて、揉んでみようか迷っている。

 

結論から書きます。揉むタイミングによって、意味が変わります。損傷から3日目に機械的な刺激を与えると、筋肉の再生が速くなったという動物実験があります。一方で、痛みのピークにある時期に強い刺激を加えると損傷が広がるという指摘もあります。

 

この記事では、筋肉痛が起きる仕組みを確認します。そのうえで、いつ触れていいのか、いつ触れてはいけないのかを研究から整理します。あわせて、ブランクの後の体に何が起きているのかも扱います。最後に、これは筋肉痛ではないかもしれない、という危険なサインについても書きます。

まず、乳酸は原因ではありません

筋肉痛の話をするとき、いまだに乳酸が悪者にされることがあります。ここから整理します。

1983年の実験が決定的でした

1983年に行われた実験があります。被験者に2種類のランニングをしてもらい、比較したものです。

 

1つは平地でのランニング。もう1つは傾斜10%の下り坂でのランニング。どちらも45分間です。

 

平地でのランニング 下り坂でのランニング
血中の乳酸濃度 有意に上昇した ほとんど上昇しなかった
その後の筋肉痛 実質的に観察されなかった 深刻な筋肉痛が出た

 

結果は、はっきり逆でした。乳酸が上がったほうには筋肉痛が出ず、乳酸が上がらなかったほうに深刻な筋肉痛が出ています。

 

時間の経過も合いません。運動で作られた乳酸は、運動が終わってから30分から60分以内に血液中から代謝されて消えます。ところが筋肉痛は、24時間から72時間後にピークを迎えます。原因が消えた1日以上あとに、痛みが最大になる。この時間差は説明がつきません。

いま、乳酸はどう理解されているか

現在では、乳酸は疲労物質ではないという理解が定着しています。

 

むしろ、筋肉や心臓、脳にとって重要なエネルギー源として働いていることが分かってきました。作られた乳酸が別の場所へ運ばれて使われる仕組みは、乳酸シャトルと呼ばれています。

 

「乳酸を流すためにマッサージを」という説明を目にすることがありますが、この前提は現在の理解と合っていません。マッサージに意味があるとすれば、別の理由によるものです。

では、何が起きているのか

筋肉痛が生じる過程は、4つの段階に整理できます。

 

  • 筋肉が力を出しながら引き伸ばされることで、筋線維の内部にある構造の境目に微細な断裂が起きる
  • 細胞のなかにカルシウムイオンが過剰に漏れ出し、タンパク質を分解する酵素が活性化する
  • 白血球の一種である好中球やマクロファージが集まってきて、壊れた組織を片づけはじめる
  • この過程で痛みを引き起こす物質が放出され、感覚を伝える神経の閾値が下がる

 

最後の段階が重要です。神経の閾値が下がるというのは、普段なら痛みと感じない程度の刺激でも痛みの信号を出すようになる、ということです。

 

筋肉痛のとき、押されると痛い、階段を降りるのがつらいという状態になるのは、この感度の変化によるものです。損傷そのものの大きさより、神経がどれだけ敏感になっているかが痛みの強さを決めています。

痛んでいるのは、筋肉ではなく筋膜かもしれない

もうひとつ、有力視されている見方があります。

 

痛みの実態は、筋線維そのものよりも、筋肉を包んでいる膜で起きている急性の炎症が主体ではないか、という見解です。まだ確定した結論ではありませんが、この見方が正しければ、外から物理的な刺激を加えることに意味がある理由の説明になります。

 

膜であれば、表面に近い層にあります。深いところにある筋線維より、外からの刺激が届きやすい位置です。

時間の経過には型がある

運動からの経過 体で起きていること
12時間から24時間 痛みが出はじめる
24時間から72時間 痛みのピーク。特に48時間前後が強い
5日から7日 痛みが消えていく
痛みが消えた後、さらに数日 筋力が完全に元の水準へ戻る

 

最後の行に注目してください。痛みが消えても、筋力はまだ戻っていません。痛くなくなったから大丈夫だと判断して次の運動に入ると、まだ回復途中の状態で負荷をかけることになります。

どの動きで、どこが痛くなるか

筋肉痛が出やすいのは、筋肉が力を出しながら引き伸ばされる動きです。この点を知っておくと、翌日どこが痛むかがおおよそ予測できます。

 

したこと 痛くなりやすい場所 引き伸ばされながら力を出している筋肉
階段や坂を下りた 太ももの前側 着地のたびにブレーキをかけている
スクワット 太ももの前側、お尻 しゃがむ動作で、体重を支えながら伸ばされる
久しぶりのランニング ふくらはぎ、すね 着地の衝撃を受け止めるたびに働く
荷物の上げ下ろし 腰、背中 下ろすときに、耐えながら伸ばされる
子どもと遊んだ 太もも、腰、肩 抱き上げと、しゃがむ動作の繰り返し

 

共通しているのは、上げるときより下ろすときに負荷がかかっているという点です。重いものを持ち上げる動作より、ゆっくり下ろす動作のほうが、翌日の痛みにつながります。

 

登山で下りのほうがつらいという経験も、同じ理屈です。登りは心肺が苦しくなりますが、筋肉の損傷は下りで起きています。翌々日に太ももの前側が痛むのは、そのためです。

 

この性質を利用すると、久しぶりの運動を組み立てやすくなります。再開の初日は、下ろす動作や下る動作を減らす。それだけで、翌日以降の痛みはかなり変わります。

「もんでいいのか」に答えます

ここが、この記事の中心です。

 

筋肉痛について書かれた記事の多くは、冷やすか温めるか、何を食べるか、どう眠るかで構成されています。「揉んでいいのか」という問いに正面から答えているものは、あまり見かけません。

 

この問いには、研究にもとづいた答えがあります。

3日目に、転機があります

2021年に発表された研究があります。マウスを対象に、ロボットアームで精密に制御した機械的な圧迫を筋肉に加え、免疫細胞の動きと筋肉の再生を解析したものです。

 

分かったことは、次のような内容でした。

 

まず、好中球という免疫細胞は、損傷の初期に壊れた組織を片づけるために不可欠です。ここまでは知られていました。

 

ところが、この好中球が長く患部に留まり続けるとどうなるか。分泌される炎症性の物質が、新しい筋肉を作る幹細胞の分化を妨げることが分かりました。片づけ役が居座ることで、次の工程が始まらないという状態です。

 

そして、損傷から3日目、およそ72時間後に機械的な刺激を与えた場合です。留まっていた好中球と炎症性の物質が物理的に押し出されました。幹細胞の分化が進み、筋線維の回復が明らかに速くなっています。

 

この研究はマウスを対象としたもので、人に対して同じ結果が出ると断定はできません。ただ、なぜタイミングが重要なのかについて、仕組みの側から説明を与えたという点で意味があります。

タイミング別に整理します

運動からの経過 体で起きていること 触れ方
直後から24時間 免疫細胞が集まり、壊れた組織の片づけが始まる時期 強い刺激は避ける。必要な初期の反応を妨げる恐れと、損傷を広げる恐れがある
2日目(24時間から48時間) 痛みが最も強い時期。神経が過敏になっている 軽くさするように流す程度。滞った組織液を動かし、腫れによる内圧を下げる
3日目以降(72時間前後から) 痛みが引きはじめ、再生の工程へ移る時期 流す施術に適した時期。ただし強く揉むのではなく、圧をかけて流す程度にとどめる

 

この表を、実感と照らし合わせてみてください。いちばん痛い時期に、いちばん揉みたくなります。ところが、その時期は強い刺激に向いていません。

 

揉むのであれば、痛みが引きはじめてからのほうが理にかなっています。痛いうちは、さするように流す程度にとどめます。

強く揉むと何が起きるか

揉み返しの仕組みを書いておきます。

 

微細な断裂が起きている組織に、強い摩擦や圧迫を加えるとどうなるか。筋線維がさらに物理的に引き裂かれ、細かい損傷が大きな損傷へ広がります。

 

すると体は、防御の反応として筋肉をさらに硬くします。硬くなったところに二次的な炎症が起きます。

 

結果として、本来5日から7日で引くはずの筋肉痛が、それを大きく超えて長引くことになります。「揉んだのに治らない」ではなく、「揉んだから長引いた」という順序です。

マッサージそのものの効果

タイミングの話とは別に、マッサージが筋肉痛に対して効果を持つかどうかについても、研究があります。

 

2017年に発表された、11件のランダム化比較試験を統合した分析があります。対象は合計504名の人間です。マッサージを受けた群は、受けなかった群と比べて筋肉痛のスコアが有意に低下しました。緩和が大きかったのは48時間後と72時間後で、この2つはほぼ同程度でした。

 

あわせて、筋力の回復についても差が出ました。最大の筋力とピーク時の力の両方で、早期の回復に寄与することが示されています。筋肉の損傷を示す血液中の指標も、有意に低下していました。

2つの研究は、別のことを見ています

ここは混同しやすいので、整理しておきます。

 

マウスの研究(2021年) 人間を対象にした分析(2017年)
見ていたもの 筋肉の再生の速さ 痛みの強さと筋力の戻り
刺激を与えた時期 損傷から3日目 研究によって異なる
結果 3日目の刺激で再生が促進 48時間後と72時間後に、ほぼ同程度の緩和

 

痛みをやわらげることと、組織の再生を進めることは、別のことです。人間を対象にした分析が示しているのは前者で、マウスの研究が示したのは後者です。

 

そして、どちらの研究も「どのくらいの強さで」という条件までは示していません。人を対象にした研究で行われたのは、いずれも痛みを与えない範囲の施術です。強く揉んで効果が出た、という話ではありません。

 

仕組みとしては、圧迫と解放の繰り返しが挙げられています。局所の血流とリンパの流れが増え、損傷した組織から漏れ出た物質を洗い流すという説明です。

 

あわせて読みたい:施術後にだるくなるのはなぜ?揉み返しとの違いと、当日の過ごし方

中高年のほうが、筋肉痛は軽い

ここで、直感に反する研究を紹介します。

 

2025年に発表された、36件の研究を統合した分析があります。若年層と中高年層で、運動後の筋肉痛を比較しています。

 

比較項目 中高年層(35歳以上)の結果
運動48時間後の筋肉痛スコア 若年層より約34%低い
運動72時間後の筋肉痛スコア 若年層より約62%低い
運動24時間後の血液の指標(筋肉の傷つき具合を示すもの) 若年層より約28%低い
筋力が回復するスピード 有意な差はなし

 

同じ相対的な強度の運動をした場合、中高年のほうが筋肉痛が軽く、しかも回復のスピードは変わらない。この結果は、多くの方の実感と逆かもしれません。

なぜそうなるのか

推察されている理由が2つあります。

 

1つは、加齢にともなって結合組織が構造的に変化し、硬くなることです。硬い組織は力を分散させるため、1か所にかかる負荷が小さくなる可能性があります。損傷の大きさと痛みの強さは、必ずしも一致しません。ただ、損傷が分散すれば炎症の起き方も変わります。結果として痛みが軽くなる、という説明です。

 

もう1つは、筋線維の構成比の変化です。速く強い力を出す線維は、引き伸ばされたときの損傷を受けやすい性質を持っています。加齢とともにこの線維の割合が減り、持久的でダメージに強い線維の割合が相対的に増えます。

 

ただし、これは筋肉痛の話に限った結果です。関節や腱への負担、心肺への負荷、転倒のリスクは別の問題です。筋肉痛が軽いから無理をしていい、という結論にはなりません。

同じ運動でも、人によって痛み方が違います

同じメニューをこなしても、翌日の状態には差が出ます。理由はいくつかあります。

 

まず、その運動をどのくらい前にしていたかです。繰り返し効果が切れているという点では、3か月ぶりの人も3年ぶりの人も同じ条件になります。ただ、3年のあいだに落ちた神経系の適応や、生活の変化による体の状態の差は残ります。

 

次に、フォームです。神経系の適応が落ちていると、動きが崩れます。同じスクワットでも、膝が内側に入る人と入らない人では、負荷のかかる場所が違います。

 

そして、先ほど紹介したとおり、年齢によっても差が出ます。35歳以上のほうが、48時間後の筋肉痛スコアが約34%低いという結果が出ています。

 

自分だけひどく痛むと感じたとしても、体力の問題だと結論づける必要はありません。条件が違えば、結果も違います。

ブランクがあっても、筋肉は残っています

「久しぶりの運動」という状況について、もう少し掘り下げます。

 

何年も運動していないと、筋肉はすっかり落ちていると考えがちです。ところが、研究が示している内容は違います。

2週間から3週間では、減りません

2022年に発表された、トレーニングの中断に関するシステマティックレビューがあります。

 

それによると、筋力トレーニングを完全に中断した場合でも、最初の2週間から3週間程度は変化がありません。筋肉の断面積に有意な減少は見られませんでした。

 

さらに、16週間から24週間、つまり4か月から6か月の中断でも、過去に獲得した筋肉量の一部は維持されています。鍛える前の状態まで完全に落ちきるには、31週間から52週間、およそ8か月から12か月を要すると報告されています。

 

念のため書き添えます。この8か月から12か月というのは、戻すのにかかる時間ではありません。休み続けた場合に、獲得した筋肉が失われきるまでの時間です。

 

1か月休んだ程度では、筋肉は落ちていません。半年空けても、すべてが失われるわけではありません。

では、「力が入らない」のは何か

久しぶりに運動すると、以前より力が出ないと感じます。筋肉が落ちていないのであれば、この感覚は何なのでしょうか。

 

2017年の研究によると、これは筋肉の細胞が減ったからではなく、神経系の適応が低下したことによるものです。

 

筋肉を動かすとき、脳から神経を通じて信号が送られます。どれだけの数の運動単位を同時に動員できるか、信号がどれだけ効率よく伝わるか。この能力が、運動を中断すると2週間から4週間程度で低下しはじめます。

 

つまり、材料は残っているのに、使う指令のほうが鈍っている状態です。挙げられる重量が数パーセント落ちても、それは筋肉が萎縮したことを意味しません。

再開したときの戻りは速い

もうひとつ、心強い話があります。

 

一度トレーニングした筋肉には、細胞のなかに記憶のような仕組みが残ることが知られています。マッスルメモリと呼ばれるものです。この仕組みによって、再開したときの回復は、初めて鍛えたときより短期間で進みます。

 

ゼロからのやり直しではありません。以前の状態へ戻る道は、初回より短くなっています。

再開するときの負荷

ここまでの内容を、実際の再開の仕方に落とし込みます。

4週間かけて戻す

アメリカのストレングス・コンディショニング協会が示している、復帰のための考え方があります。休止前の運動量を100%として、段階的に戻していく方法です。

 

復帰からの週 休止前と比べた運動量
1週目 50%減らす
2週目 30%減らす
3週目 20%減らす
4週目 10%減らす

 

これは競技者向けに示されたものですが、考え方は一般の方にも当てはまります。要するに、4週間かけて元の水準へ戻すということです。

 

久しぶりの運動でひどい筋肉痛になる方の多くは、初日に以前と同じ量をこなそうとしています。神経系の適応が落ちた状態で、以前と同じ動きをしようとすると、フォームが崩れ、狙っていない筋肉に負荷が乗ります。

ブランクの長さ別の目安

再開時の強度について、目安とされている数字があります。

 

ブランクの長さ 休止前と比べた強度の目安
1か月未満 60%から70%
1か月から3か月 50%から60%。セット数も3分の2程度に
3か月以上 40%から50%

 

この数字は目安であって、確立された基準ではありません。年齢、これまでの運動歴、ブランク中の生活によって変わります。

 

前の表と数字が違うことに気づかれたかもしれません。前の表は運動の総量、こちらは1回あたりの強度についてのものです。単位が違います。

 

迷われる場合は、こう考えてください。何年もブランクがあるなら、以前の半分以下の強度で、量も半分から始める。そして4週間かけて戻していく。この形であれば、どちらの目安からも外れません。

 

1つだけ確かなことがあります。初日に追い込まないことです。物足りないくらいで終えたほうが、2日目、3日目と続きます。続いた結果として体は変わります。

これは筋肉痛ではないかもしれません

ここからは、注意していただきたい状態です。

肉離れとの見分け方

筋肉痛だと思っていたものが、肉離れであることがあります。この2つは、対処がまったく違います。

 

筋肉痛 肉離れ
いつ痛むか 翌日から翌々日に、徐々に 運動しているその瞬間に、突然
痛みの感じ 全体的な重だるさ、鈍い痛み 「ブチッ」という音をともなう鋭い激痛
痛む場所 動かした筋肉の全体 1点に強い圧痛がある
見た目 特に変化なし 内出血、はっきりした腫れ。重い場合は筋肉が凹む
マッサージ ピーク後なら、さする程度は可 行ってはいけない

 

最後の行が重要です。肉離れに対するマッサージは、行ってはいけません。

 

受傷から48時間から72時間の急性期は、マッサージも入浴による加温も避けてください。血流が増えることで、内出血が悪化します。この時期は冷やして安静にし、整形外科を受診してください。

コーラ色の尿が出たら、すぐに受診を

まれですが、重い状態があります。横紋筋融解症です。

 

筋肉の細胞が壊れ、内容物が血液中に流れ出す状態です。流れ出たミオグロビンという物質が腎臓の尿細管を詰まらせ、急性の腎不全を引き起こすことがあります。最悪の場合、命に関わります。

 

サインは次のとおりです。

 

  • 尿がコーラ色、赤褐色、レンガ色のように非常に濃い
  • 尿の量が極端に減っている
  • 動かした部位だけでなく、全身の筋肉が激しく痛む
  • 手足に力が入らない、しびれる
  • 極度の倦怠感、発熱、全身のむくみ

 

特に、尿の色は分かりやすいサインです。運動の後に濃い色の尿が出た場合は、様子を見ずに医療機関を受診してください。

 

この状態が報告されているのは、次のような場合です。普段運動していない人が突然高い強度の運動を長時間行った場合、脱水の状態で過酷な運動をした場合です。まさに「久しぶりの運動」という状況が、条件に当てはまります。

 

脅かすつもりはありません。頻度としてはまれです。ただ、条件が重なりうる状況ではあるので、サインだけは知っておいていただきたいと思います。

自分でできること

タイミングの話をしてきましたが、揉む以外にできることも整理しておきます。

冷やすか、温めるか

時期によって変わります。

 

運動の直後から24時間ほどは、炎症が始まる時期です。熱を持っている、腫れているという場合は、冷やすほうが合います。

 

2日目を過ぎて痛みが引きはじめたら、温めるほうへ切り替えます。血流を増やすことで、片づけと修復が進みやすくなります。

 

迷う場合は、触ってみてください。熱を持っているなら冷やす、そうでなければ温める。この判断でおおむね間に合います。

 

ただし、この簡便な判断を使う前に確かめていただきたいことがあります。1点に鋭い痛みがある、内出血がある、はっきり腫れている。この3つのいずれかがある場合は、肉離れの可能性があります。肉離れは熱を持たないこともあるため、この判断では拾えません。該当する場合は温めず、整形外科を受診してください。

ストレッチは、筋肉痛には効きません

意外に思われるかもしれませんが、静的なストレッチには筋肉痛を軽くする効果が確認されていません。複数のレビュー研究で、効果はほぼゼロとされています。

 

これはストレッチが無意味という意味ではありません。関節の動く範囲を保つこと、体の緊張をほどくこと。こうした目的には有効です。ただ、筋肉痛の軽減はその中に入っていません。

 

むしろ、痛みのピークにあたる時期に強く伸ばすと、微細な損傷を広げる恐れがあります。この時期は、痛みの出ない範囲にとどめてください。

睡眠とたんぱく質

修復が進むのは、眠っているあいだです。ここを削ると、他に何をしても回復は遅れます。

 

材料も要ります。壊れた組織を作り直すためのたんぱく質です。特別なものを用意する必要はなく、普段の食事で意識していただければ十分です。

 

水分も忘れないでください。特に、久しぶりの運動で汗をかいた日は、脱水の状態が続きやすくなります。先ほど触れた横紋筋融解症も、脱水が条件のひとつに挙げられています。

軽く動かす

痛いからといって、まったく動かさないのも回復を遅らせます。

 

散歩程度の軽い運動は、血流を増やし、片づけの工程を進めます。同じ運動を繰り返すのではなく、痛む場所を優しく動かす程度で構いません。

 

翌日に階段を降りるのがつらいとき、手すりを使ってゆっくり降りる。これも動かしていることになります。完全に安静にするより、この程度の動きがあったほうが戻りは早くなります。

 

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プロの施術に、何ができるか

ここまでの内容を踏まえて、施術の使いどころを整理します。

3日目以降が、いちばん合う

研究が示しているタイミングと、施術を受けるタイミングは重なります。

 

運動から72時間前後が過ぎ、痛みが引きはじめた頃。この時期であれば、体への負担が少ない状態で施術を受けていただけます。

 

マウスの研究が示した内容を思い出してください。3日目の機械的な刺激で、留まっていた免疫細胞が押し流され、再生が進みました。人間で同じことが起きると断定はできませんが、タイミングを選ぶ理由としては筋が通っています。

 

逆に、痛みがピークにある時期の強い施術は避けます。ご来店いただいても、その時期であれば圧を弱めて流す内容に変更します。

ご予約のときに伝えていただきたいこと

  • いつ運動したか(何日前か)
  • 何をしたか(走った、筋トレ、山に登った)
  • どのくらいのブランクがあったか
  • いま痛みはどの程度か

 

この4つが分かると、こちらの組み立てが変わります。特に1つ目は重要で、2日前と5日前では、同じ部位でも触れ方を変えます。

自分では届かない場所

久しぶりの運動で痛くなりやすいのは、太ももの前側、お尻、ふくらはぎ、そして背中です。

 

このうち、太ももとふくらはぎは自分でも触れます。お尻の奥にある筋肉と、背中の深い層は、自分では届きません。

 

そして、久しぶりの運動では、フォームが崩れていることが多くあります。神経の適応が落ちた状態で以前と同じ動きをしようとするため、狙っていない場所に負荷が乗ります。この偏りは、自分では気づきにくいものです。

 

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よくあるご質問

運動を何日しないと筋肉が落ちますか?

2週間から3週間程度では、筋肉の断面積に有意な減少は見られないと報告されています。

 

4か月から6か月の中断でも、過去に獲得した筋肉量の一部は維持されます。鍛える前の状態まで完全に落ちきるには、8か月から12か月ほどかかるとされています。失われるまでに、それだけの時間がかかるということです。

 

ただし、力が出にくくなるのはもっと早い段階です。神経系の適応が2週間から4週間程度で低下しはじめるためです。「力が落ちた」という感覚と、「筋肉が落ちた」という事実は、時期がずれています。

久しぶりに筋トレしたら筋肉痛になるのはなぜ?

理由は2つあります。

 

1つは、繰り返し効果が切れていることです。同じ運動を続けていると、体は損傷しにくくなります。この保護は数週間から数か月で切れるため、ブランクが数か月を超えていれば、以前と同じ運動でも損傷は大きくなります。

 

もう1つは、フォームの問題です。神経系の適応が落ちた状態で以前と同じ重量や速度をこなそうとすると、動きが崩れます。狙っていない筋肉に負荷が乗り、慣れない使われ方をした場所が痛みます。

 

対策は、初日に追い込まないことです。休止前の50%程度から始めて、4週間かけて戻していくのが、公的な団体が示している考え方です。

筋肉痛を最短で治す方法は?

正直に書きます。劇的に短縮する方法はありません。

 

筋肉痛は、5日から7日かけて引いていきます。この期間そのものを大きく縮める手段は、現在のところ確認されていません。

 

できるのは、その期間の過ごし方を変えることです。

 

  • 睡眠を確保する。修復が進むのは眠っているあいだ
  • たんぱく質と水分を取る
  • 散歩程度に軽く動かす。完全な安静より戻りが早い
  • 48時間を過ぎたら温める
  • 痛みが引きはじめたら、流す施術を受ける

 

逆に、やらないほうがいいこともあります。痛みのピークにあるときに強く揉むこと、強く伸ばすこと。どちらも損傷を広げ、結果として長引かせます。

筋肉痛を明日までに治したいのですが、方法はありますか?

難しいと申し上げるほかありません。

 

痛みは24時間から72時間でピークを迎えます。今日痛いなら、明日はまだピークの範囲にあることが多くなります。

 

できるのは、痛みを少しやわらげることです。運動から24時間以内で熱を持っているなら冷やし、2日目を過ぎていれば温めます。あわせて、軽く動かし、睡眠を取ってください。市販の外用薬を使う方法もあります。

 

強く揉んで一気に治そうとするのは、逆効果になります。翌日にさらに痛くなる可能性があります。

久しぶりの筋トレで、筋肉痛が長く続くのはなぜですか?

通常、筋肉痛は5日から7日で引きます。これを大きく超えている場合、いくつかの可能性があります。

 

1つは、痛みのある時期に強い刺激を加えたことです。揉んだり、強く伸ばしたり、痛みを押して運動を続けたりすると、損傷が広がって回復期間が延びます。

 

2つは、筋肉痛ではない可能性です。1点に鋭い痛みがある、内出血がある、腫れているという場合は、肉離れが疑われます。

 

3つは、休息が足りていないことです。痛みが引く前に次の運動をすると、損傷が積み上がります。痛みが消えても筋力の回復にはさらに数日かかるため、体感より長めに空けるのが安全です。

 

2週間以上続く場合、しびれや力の入らない感覚をともなう場合は、医療機関でご相談ください。

プロテインを飲めば筋肉痛は早く治りますか?

材料としては有効ですが、それだけで劇的に早くなるわけではありません。

 

壊れた組織を作り直すにはたんぱく質が要ります。不足していれば修復は進みません。ただ、普段の食事で足りている方が追加で摂っても、回復が加速するとは限りません。

 

優先順位としては、睡眠が先です。材料があっても、修復が行われる時間がなければ進みません。

マッサージは、運動の何日後に受けるのがいいですか?

痛みが引きはじめてから、つまり運動から3日目以降をお勧めしています。

 

動物実験の結果ではありますが、報告があります。損傷から72時間後に機械的な刺激を与えた場合に、免疫細胞が押し流されて再生が進んだというものです。痛みのピークを過ぎたタイミングには、仕組みの上でも意味があると考えられます。

 

それより早い時期にお越しいただく場合は、圧を弱めて流す内容に変更します。当日の状態を伺って判断しますので、いつ運動したかをお伝えください。

まとめ

久しぶりの運動による筋肉痛について、順を追って見てきました。

 

まず、乳酸は原因ではありません。1983年の実験が、それを示しています。乳酸が上がったランニングでは筋肉痛が出ず、乳酸が上がらなかった下り坂のランニングで深刻な筋肉痛が出ました。現在、乳酸はエネルギー源として理解されています。

 

実際に起きているのは、筋線維の微細な断裂と、そのあとに続く炎症です。痛みは12時間から24時間で出はじめ、24時間から72時間でピークを迎え、5日から7日で引いていきます。

 

そして、揉むタイミングには意味があります。マウスを対象とした研究があります。損傷から3日目に機械的な刺激を与えた場合、留まっていた免疫細胞が押し流され、筋肉の再生が明らかに速くなりました。逆に、痛みのピークにある時期の強い刺激は、損傷を広げて回復を遅らせます。

 

ブランクについても、悲観する必要はありません。2週間から3週間では筋肉は減っていませんし、半年空けても一部は残っています。力が出ないのは神経系の適応が落ちているためで、再開すれば初回より速く戻ります。

 

そして、35歳以上のほうが筋肉痛は軽いという研究があります。48時間後で約34%、72時間後で約62%低いという結果です。ただし、これは筋肉痛に限った話です。関節や腱への負担、心肺への負荷、転倒のリスクは別の問題として残ります。

 

再開するときは、休止前の50%程度から。4週間かけて戻すのが、公的な団体の示す考え方です。初日に追い込まないことが、続けるための条件になります。

 

痛みが引きはじめた頃に、一度体を流しておく。この時期に外から手を入れることには、研究に裏づけられた理由があります。運動を続けていくための一手として、選択肢に入れていただければと思います。

 

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※当店の施術はリラクゼーションを目的としたものであり、医療行為ではありません。疾病の治療や症状の改善を目的とするものではなく、診断や治療は行っておりません。痛みが続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

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